新型コロナウイルス感染拡大の「第3波」で公共交通機関がまたも苦境に立たされている。経営共創基盤(東京・千代田)傘下で東北・関東地方のバス・鉄道会社6社の事業再生に取り組むみちのりホールディングス(HD、同)は、地方の公共交通機関への支援拡大を検討する。みちのりHDの松本順グループCEO(最高経営責任者)に、地方の公共交通機関の現状と、再生への道筋について聞いた。

松本順(まつもと・じゅん)氏
日本リース、ゼネラル・モーターズ系投資会社を経て、2003年に産業再生機構執行役員に就任。九州産業交通、関東自動車、アビバジャパンなどの事業再生案件を統括。機構解散後、経営共創基盤を冨山和彦氏らと設立し、共同経営者(パートナー)マネージングディレクターに就任。経営共創基盤の100%子会社であるみちのりホールディングスのグループCEOとして、地方のバス・鉄道会社の事業再生に取り組む(写真:都築雅人)

コロナ禍による乗客の減少で大手航空会社やJR各社が巨額の赤字を計上していますが、地方の公共交通はどのような状況なのでしょうか。

松本順CEO(以下、松本氏):コロナの第3波にともない、直近では路線バスの運賃収入が平常時の7割ほどに減っています。地方のバスは通勤・通学客が中心ですが、テレワークは大都市ほど浸透していませんし、学校も通常通り授業が行われています。では何が減っているかというと、高齢者の利用です。感染を恐れ、日常の買い物や病院への通院を極端に減らしているのです。

 高速バスは、路線が長距離になるほど苦しい。青森県、岩手県、福島県と東京を結ぶ路線は、採算が取れるだけの乗客が集まらないので運休しています。一方、岩手県北自動車の盛岡―宮古や会津乗合自動車の郡山―会津若松などの路線は、生活路線ですので運行を続けています。

 最も深刻なのは貸し切りバスです。企業や学校の送迎バスを除けば、2020年春から大きな影響を受けています。春に延期になっていた修学旅行の目的地が近場に変更になった影響で秋に一時的な特需がありましたが、それも終わり、今は予約が極めて少ない状況です。政府が「Go Toトラベル」を実施していた時期も感染リスクを避けてマイカーで移動する人が多く、バス業界への恩恵はほとんどありませんでした。

 この状況は、地方のバス会社の経営に大きな影響を及ぼしています。もともと地域の路線バスは大きな利益を上げられる事業環境になく、国や自治体の補助金に頼っている。それでも赤字のすべては埋めきれないので、高速バスや貸し切りバスの収益で支えてきました。この構図が崩れ、非常に苦しい状況です。

 今は雇用調整助成金などで維持していますが、緊急事態宣言が終了した月の翌月末でその特例措置が打ち切られると聞いています。一方、ワクチン接種で国民が集団免疫を獲得するまで少なくとも半年はかかるでしょう。その間に経営が厳しくなる事業者は増えてくる。みちのりHDに事業再生の相談が持ち込まれるケースが増えるのではないかと見ています。

 みちのりHDの親会社である経営共創基盤は、20年12月に地方銀行やKDDIなど8社から出資を受け、地方創成を目的とした投資・事業会社「日本共創プラットフォーム(JPiX)」を設立しました。1000億円規模の資金調達を目指しています。みちのりHDは現在、経営共創基盤の100%子会社ですが、今後JPiXの傘下に移り、交通分野の再生を担う予定になっています。

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