ムーンライトながらは09年に臨時列車となった後、運転する日が徐々に減らされ、JRの普通・快速列車を5日乗り放題で1万2050円と破格の「青春18きっぷ」が使える時期にしか走らないようになった。この切符と組み合わせない限り、高速バスに対して料金面でも快適性でも優位性を出せないからだ。一方で、夜行列車を走らせるためには、深夜勤務の乗務員を確保する必要があることに加え、駅も深夜まで営業させなければならないなど、様々なコストがかかる。コロナ禍で終電の繰り上げにも踏み切らざるを得ないなか、収益性が高いとはいえない夜行列車を走らせ続ける意義は薄くなっていた。使用してきた車両が引退することを機に、廃止に踏み切った。

 夜行列車の運行コストは低くないだけに、見合った収益を上げられるかどうかがポイントになってくる。JR各社は寝台特急を廃止する一方、豪華なクルーズトレイン事業に乗り出している。JR九州のななつ星、JR東の「トランスイート 四季島」、JR西の「トワイライトエクスプレス 瑞風」がそれだ。いずれも回遊して出発地に戻ってくるコースで、移動ではなく乗ることそのものを目的としている。車内での宿泊や食事、観光がセットで十万円を超えるようなツアー代金がかかるが、抽選になるほど人気だという。

 20年にはJR西が、これよりも安価なクルーズトレイン「ウエストエクスプレス銀河」の運行も始めた(参考記事:「特急の「密」回避ニーズ、鉄道会社はツアー商品に活路」)。車内での人的サービスを行わないことにより、ツアー料金を数万円に抑えている。付帯サービスではなく、横になるなど自由な過ごし方ができる点を前面に打ち出す。

 移動手段としての夜行列車は、東京と出雲市(島根県)、高松(香川県)とを結ぶ寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」が唯一の存在となった。寝台個室が主体で付加価値がある列車ではあるものの、クルーズトレインほど目立った特徴があるわけではない。運行区間はJR東、東海、西、四国の4社にまたがり、4社が足並みをそろえないと利用者への訴求が難しい側面があるという。運行開始から20年以上経過していることもあり、今後の動向に注目が集まる。

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