JR東日本、JR九州に続いて、JR西日本も新幹線を使った荷物の輸送に乗り出すことを決めた。コロナ禍で旅客輸送が大きく落ち込む中、安定している貨物需要を取り込む狙いがある。ただし、事業として成立させるためには、駅から先の輸送を担う物流事業者との連携が不可欠だ。在来線で貨物列車を走らせるJR貨物も新幹線の活用を目指しており、新たなビジネスとなる可能性が出てきた。

 緊急事態宣言の再発出で鉄道各社が再び危機に直面している。JR西日本の長谷川一明社長は1月18日の記者会見で「足元の状況は大変厳しい」と述べた。山陽新幹線の利用客数は2020年12月は前年同月比40%だったが、21年1月前半(1~14日)は29%に低下。緊急事態宣言の対象地域が首都圏以外に広がると「さらに5~7ポイント低下した」(長谷川氏)という。

 そんな中、JRグループで唯一輸送量を落としていないのがJR貨物だ。20年上期こそコロナ禍による企業活動の停滞で前年同期比13.9%減となったが、20年10~12月はわずか0.6%減と、ほぼコロナ前まで回復した。JR貨物の真貝康一社長は「生活や経済を物流が支えている表れ」と話す。

 旧国鉄の分割民営化で旅客輸送と貨物輸送は完全に分離されたが、ここへきてその垣根が崩れつつある。「人の移動が停滞する一方、物の動きは活発化している」(JR西日本の長谷川氏)として、北海道、東日本、西日本、九州のJR各社が旅客列車を使った荷物の輸送に取り組み始めたからだ。JR東日本はすでに20年10月から、仙台駅から東京駅まで新幹線の空きスペースを使った週2便の定期輸送をスタートさせている。JR九州は佐川急便と提携し、宅配便を九州新幹線で輸送する検討を進めている。

JR東日本は駅ナカで販売する特産品の輸送に、新幹線の活用を本格化している
JR東日本は駅ナカで販売する特産品の輸送に、新幹線の活用を本格化している

 JR西日本は、先行するJR東日本、JR九州と連携して荷物輸送を事業化することを決めた。JR東日本とは両社が運営する北陸新幹線を使い、北陸の特産品を首都圏へ運んで販売する。これまでもキャンペーンで単発で取り組んだことはあるが、継続的な事業スキームを構築すべくJR東日本と協議を進めているという。JR九州とは、山陽新幹線と九州新幹線を直通する列車を使って九州の特産品を新大阪駅まで運び、在来線に積み替えて大阪駅や京都駅まで運ぶ実験を2月から始める。

 新幹線を運行するJR5社のうち、東海道新幹線を担当するJR東海以外の4社が荷物の輸送に取り組むことになる。JR西日本が実証実験を行うに当たっては、新大阪駅を管理するJR東海の協力を得ることになっており、「同社にも荷物の輸送に関心を持ってもらっている」(長谷川氏)という。首都圏と関西を結ぶ東海道新幹線も仲間に加われば、首都圏と全国各地を結ぶ新しい物流網が構築されることになる。

 その一方で課題として残るのが、駅から先の配送をどうするのかという問題だ。

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