2050年の「カーボンニュートラル」実現に向け、ゼネコン各社が「創エネ」「蓄エネ」「省エネ」をキーワードに環境技術の開発を急いでいる。計画から竣工まで時間のかかる建設業界にとって約30年後は近い未来。五輪特需の熱狂が終わりを告げて業界が冷え込む中、脱炭素で出遅れれば淘汰される可能性もある。

5兆円超の市場規模が見込まれる、洋上風力発電施設の建設工事需要。受注獲得に向けて500億円の投資で先手を打ったのが清水建設だ。
広島県呉市にあるジャパンマリンユナイテッド(JMU)呉工場。かつて「戦艦大和」を建造したドックの横に、青い船体のSEP船(自己昇降式作業船)が浮かんでいる。船に取り付けたクレーンの揚重能力は最大2500トン。清水建設新エネルギーエンジニアリング事業部の白枝哲次事業部長は「世界最大級のSEP船になる」と胸を張る。
国内では現在、800トンクレーンを搭載した五洋建設のSEP船が稼働している。五洋建設はさらに鹿島、寄神建設(神戸市)の3社で共同出資して1600トンクレーンの船を建造中だ。また、大林組と東亜建設工業は1250トンクレーンの船を2023年に完成させるべく共同で建造を進めている。各社がクレーン揚重能力を高めているのは、洋上風力発電所の風車の大型化が進んでいるためだ。ただし、これまでの大型SEP船には弱点があった。自航できず、移動には複数のえい航船が必要になるのだ。
清水建設のSEP船は自航式で、機動力が高い。白枝事業部長は「非自航式は現場を変えて施工すると工程が長期化しやすい。自航式なら限られた期間で何十基と施工できる」と利点を説明する。洋上風力の本場である欧州でも自航式SEP船が主流だ。欧州船の用船費用は1回につき数十億円になるという。高性能なSEP船の単独保有には多額の投資が必要だが、それでも清水建設が決断したのは、環境分野で競合に後れを取らないための“切り札”が必要だとみるからだ。
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