コロナ禍を経て都心部の不動産運用が変わり始めている。オフィスタワーや商業施設、ホテル、住宅などで構成される複合商業施設「恵比寿ガーデンプレイス」では、開業時から入居していた「恵比寿三越」が2021年2月に閉店。同施設を運営するサッポロ不動産開発(東京・渋谷)は、都心部の不動産の在り方を再検討し、22年にテナントを大幅に入れ替えるリニューアルを実施する。21年10月には手始めに創業130年の歴史を誇る米ニューヨークの老舗ステーキハウスを隣接地にオープン。9月から予約の受け付けを始めたところ、開始わずか3分で140組の予約が入ったという。開業から30年近くが経過した複合施設は、新しい施設とどのように競うのか。「不動産の目的を絞らなければ勝ち残れない」と語るサッポロ不動産開発の時松浩社長に今後の不動産戦略を聞いた。

<span class="fontBold">時松浩(ときまつ・ひろし)氏</span><br>サッポロ不動産開発社長。1962年大分県生まれ。84年慶応義塾大学商学部卒業、同年に江崎グリコ入社。91年サッポロビール(現サッポロホールディングス)入社。マーケティングやブランド戦略を担当する。2003年にサッポロ飲料に出向し営業経理や経営戦略を経験。06年サッポロビール復職。13年取締役就任。営業本部長、経営戦略、国際事業などを担当した。19年3月から現職。(写真:都築雅人)
時松浩(ときまつ・ひろし)氏
サッポロ不動産開発社長。1962年大分県生まれ。84年慶応義塾大学商学部卒業、同年に江崎グリコ入社。91年サッポロビール(現サッポロホールディングス)入社。マーケティングやブランド戦略を担当する。2003年にサッポロ飲料に出向し営業経理や経営戦略を経験。06年サッポロビール復職。13年取締役就任。営業本部長、経営戦略、国際事業などを担当した。19年3月から現職。(写真:都築雅人)

百貨店の三越が閉店し、恵比寿ガーデンプレイスは大きな変革期に差し掛かっています。コロナ前は年間1300万人が訪れていたそうですが、運営方針はどのように変わるのでしょうか。

時松浩氏(以下、時松氏):恵比寿ガーデンプレイスの商業棟は22年秋のリニューアルオープンを目指して改装中です。まず22年春に、スーパーマーケット「ライフ」や老舗食品店「明治屋恵比寿ストアー」、ドラッグストアの「トモズ」など一部の店舗を先行開業する予定です。

 サッポロビール工場跡地の再開発事業として恵比寿ガーデンプレイス(1994年竣工)をつくったのはバブル経済が終わる時期で、ちょうど百貨店もピークを迎えていました。恵比寿周辺に富裕層が多いことは変わりませんが、今日の消費行動は当時と明らかに変わっています。

 三越の閉店は、20年秋には通知されていました。ただ、テナント運営の戦略転換について議論していたのはコロナ禍の前からです。大規模な商業施設で幅広く集客して、その人流を施設内の飲食店に誘導する戦略から脱却しようという計画を立てていました。

 当社がビールとの関係が深いということもあり、恵比寿ガーデンプレイスにはレストランやカフェ、「ウェスティンホテル東京」も含めると約4000席の飲食客のキャパシティーがあります。しかし、この規模はずいぶん前から過剰気味でした。オフィス棟のテナント企業が時代に合わせて変化したことで“夜の需要”が弱くなっていたのです。

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