東京に世界の投資家から視線が集まっている。不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)の調べによると、2020年1~6月期の都市別の不動産直接投資総額ランキングで、ニューヨークやパリを抑えて東京が1位を獲得した。

 2四半期を通じて東京が首位となったのはJLLの調査でも初めてだという。同社の河西利信社長は「コロナ禍の影響が世界各国に及ぶ中、安全資産としての日本の不動産が選好されている。為替市場で見られるような『有事の日本買い』が不動産でも起きている」と指摘する。

(資料:ジョーンズラングラサール)
(資料:ジョーンズラングラサール)
[画像のクリックで拡大表示]

 日本市場に資金を振り向ける海外投資ファンドの動きも目立っている。香港の大手投資ファンド「PAG」は4年ほどかけて最大約8400億円を日本の不動産に投じる計画だ。カナダに本社を置く「ベントール・グリーンオーク(BGO)」も日本の不動産への投資枠を拡大し、今後2~3年で最大1兆円を投資すると報じられた。

 コロナ禍の影響で世界の不動産投資が前年比で3割ほど減少する中、「日本はコロナ禍からの立ち直りが早い」との見方から、東京に期待を寄せる海外投資ファンドが多いようだ。

リーマン・ショック時の記録が安心材料に

 海外勢の投資は19年10~12月期から顕著に増えている。同期の日本への不動産直接投資総額に占める海外投資家の割合は51%に達した。コロナ禍の影響を受けた20年4~6月期には投資総額の伸びは鈍化しているものの、依然として海外勢は39%となっている。市場分析を担当したJLLリサーチ事業部の谷口学チーフアナリストは「東京の不動産に安心感があるのは、リーマン・ショック時の市場動向が記録されているためだ」と指摘する。

 アジア圏の不動産市場は成長著しい中国やインドのほうが高い利回りが期待できる。しかし、新興市場であるため、東京に比べて取引情報の蓄積が少ない。そのため、コロナ禍のような世界的危機での市場動向が読みにくい。

 一方、日本はリーマン・ショック後の市場の回復を分析できるデータが残っているため、ある程度は市場に出回る物件の流動性を把握できる。加えて、法制度が整備され、低金利で資金を確保できる環境が、海外投資家を呼び込んでいるのだ。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

 昨今ではインターネット通信販売の活況で物流施設への投資が増えている。他の不動産セクターでは、「一定の実需が見込めて安定した賃料収入が見込める賃貸マンションが人気だ」(谷口チーフアナリスト)。グレードの高いマンションほど収入が安定した住人が多いため解約が出にくい。空室率が高くなった場合にも賃料に「下げ代」があるため、入居者を確保しやすい利点がある。近年では1棟で数億円から数十億円の賃貸マンションを何十棟も保有し、まとめて売買する取引が増えている。

 例えば、19年秋ごろにはドイツの保険大手アリアンツ傘下の不動産運用会社、アリアンツ・リアル・エステートが東京などの賃貸マンション約80棟を約1300億円で米大手投資ファンドのブラックストーン・グループから買った。谷口チーフアナリストはこうした動きについて、「不動産を数百億円規模のバルクで売買するのは世界の潮流だ。利回りが低くても安定収入が得られる東京の不動産は、海外政府系ファンドに買われており、日本の不動産でも賃貸マンションを買い集める動きは続くと見られる」と分析する。

 海外投資家の視線は今後、どこに向かうのか。まだ投資案件としては物件数が少ないものの「データセンターに注目したい」という声が増えているという。また、高利回りよりも安定収入を重視する海外投資家が多いことから、高齢者施設などのヘルスケア部門も着実な賃料収入が見込める期待のセクターに成長する可能性がある。

この記事はシリーズ「江村英哲の「ひと×街×テック」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。