三井不動産は10月6日、既存の建築物の柱や壁などを生かしながら新築同等の物件に再生する「リファイニング建築」の現場を公開した。再生に取り組んでいるのは、東京都新宿区にある9階建ての賃貸マンション。新築で建て替える場合に比べて二酸化炭素(CO2)排出量を約7割減らせるという。三井不動産はストック活用の「期待の星」とされるリファイニング建築の普及を目指すが、課題も残る。

三井不動産などが進める東京都新宿区の賃貸共同住宅「シャトレ信濃町」の再生工事は、築50年ほどの9階建ての建物を、「リファイニング建築」という手法で既存の躯体(構造を支える骨組み)の84%を再利用しながら再生する。新築での建て替えに比べて鉄やセメントなどの資材が減ることによるCO2排出量の低減効果が、この建物では72%に達することが分かった。国が2050年の「カーボンニュートラル」実現を目指す中、CO2排出量を減らすために既存建築の有効活用を検討する例が増えそうだ。
三井不動産は16年から、建物の躯体を活用しながら耐震補強や外観のリニューアルができるリファイニング建築の事業に取り組んできた。再生物件をオーナーから借り上げ、転貸するサブリース事業までを含めた事業モデルを展開している。
全国には1981年6月に施行された現在の耐震基準を満たさない物件が数多く残っている。政府は「今後30年間にマグニチュード7クラスの首都直下型地震が発生する確率が約70%」と公表している。それ以前に竣工した旧耐震基準の建物は、設備の古さだけではなく安全性の面からも採算性が低下しやすい。
シャトレ信濃町オーナーの木村達央氏も竣工から半世紀が経過して耐震性能が心配になったため、当初は耐震補強を考えていたという。しかし、開口部が大きく構造的に弱い南側を大きくバツを描くような筋交いで遮ると、景観が悪くなって賃料が下がってしまう。建て替えも考えたというが、規制に従って新築する場合、規模を5階建てに縮小せざるを得なかった。「収益が悪化しないように現在の規模を維持したいと考えた」(木村氏)のが、リファイニング建築を選択した理由だ。
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