7月に静岡県熱海市で発生した大規模土石流で被災した伊豆山地区の住民。土地所有者らを相手取り損害賠償を求める訴訟を起こした。(写真:共同通信)
7月に静岡県熱海市で発生した大規模土石流で被災した伊豆山地区の住民。土地所有者らを相手取り損害賠償を求める訴訟を起こした。(写真:共同通信)

 7月3日に静岡県熱海市で発生した土石流では26人が命を落とし、131軒の家屋が被災。現在も1人が行方不明となっている。復興や復旧のめどが立たない中、9月28日に被災者や遺族ら70人が土石流の起点となった土地の現所有者、前所有者などに対し、合計で32億円超の損害賠償を求める訴訟を静岡地方裁判所沼津支部に起こした。

 静岡県によると、市街地に押し寄せた土石流のうち9割超の土砂が逢初(あいぞめ)川上流部の盛り土由来であった。訴状では「土石流自体が明確に『人災』により生じたものであったと考えている」と指摘しており、土地所有者らの法的責任を追及する姿勢だ。

証拠隠滅や資産隠しにくさび

 伊豆山の逢初川上流部に置かれた盛り土には、適切な排水工事や擁壁の設置がなかった。下流域への土砂崩壊の危険性については以前から指摘されていたという。そのため原告側は、盛り土を放置した過失や保存の瑕疵(かし)が土石流の原因になったと主張している。

 「熱海市盛り土流出事故被害者の会」の会長を務める瀬下雄史氏は8月に、前所有者を業務上過失致死容疑で、現所有者を重過失致死容疑で刑事告訴している。瀬下氏は今回の土石流で70代の母親を亡くしており、「土地所有者らが証拠隠滅や資産隠しをしないようくさびを打っておきたかった」と話す。

 遺族らは10月中にも前所有者を殺人容疑で刑事告訴する準備を進めている。原告の訴訟代理人を務める加藤博太郎弁護士は「強い行政処分がなされないまま、違法な盛り土が10年近く放置されてきた。安全確保の措置が適切に取られていたならば、これほど多くの人命が失われなかっただろう」と指摘する。

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