8月23日午前、東京都心と茨城県つくば市を結ぶつくばエクスプレスが3時間にわたって全線で運転を見合わせた。原因は落雷だ。沿線の車両基地の無線設備などが故障した。
こうした被害は今後増えると懸念されている。米国では平均気温が1度上昇すると落雷が約12%増えるとの研究結果もある。特にヒートアイランド現象が常態化する都市部は以前より落雷が発生しやすい環境になっているのだ。

落雷による都市機能のまひは重大な社会問題だ。交通や通信インフラ、エネルギー施設への損害は、BCP(事業継続計画)の観点からも対策が欠かせなくなっている。加えて、病院など医療施設への被害は人工透析器などの停止をもたらす可能性もあり、人命へのリスクも考慮しなければならない。そこで、建築物や設備に“雷を落とさない避雷針”「PDCE(極性反転型避雷針)」の導入が進んでいる。小田急電鉄では2014年からPDCEを導入しており、高架区間や橋梁を中心に300台以上を設置した。
小田急電鉄では13年8月に和泉多摩川~登戸間を走行中の電車付近に落雷があり、最大103分の遅延が生じた。この故障から落雷対策としてPDCEの導入を決めた。「以後、設置箇所では落雷によるトラブルは発生しておらず、現在では線路に加えて機械室などへの設置を増やしている」(小田急電鉄)
PDCEは落雷を誘導して建物全体を守る従来の避雷針とは逆の原理。製造・販売する落雷抑制システムズ(横浜市)の松本敏男社長は「雷を引き寄せる正電荷ではなく、負電荷の避雷針を建てて落雷を招かなくする」と説明する。
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