国内不動産への大口投資で名をはせる米投資ファンドのブラックストーン・グループ。最近では近鉄グループホールディングス(GHD)から「都ホテル京都八条」を含む8物件を約600億円で買い取った取引が話題になった。同社は昨夏にも大和ハウス工業の物流施設4カ所を約550億円億円で買収。2021年1月には三越伊勢丹ホールディングス子会社で賃貸住宅事業を手掛ける三越伊勢丹不動産を買収するなど、日本の不動産に積極的な投資を続けている。世界的な低金利により金融商品の運用が難しくなる中、比較的利回りの高い不動産への投資妙味について、ブラックストーン・グループ・ジャパン代表の橘田大輔氏に聞いた。

橘田大輔(きった だいすけ)氏
ブラックストーン・グループ・ジャパンの代表取締役ならびにシニア・マネージング・ディレクター。日本における同社不動産グループの責任者。2008年のブラックストーン入社以来、さまざまな不動産投資案件の発掘や投資の実務に携わる。ブラックストーン入社以前はドイツ銀行で国内の不動産取引の組成・執行を担当。米コーネル大学ホテル経営学部で学士を取得

コロナ禍の影響で取引が活発になる不動産はどのようなカテゴリーになるのでしょうか。

橘田氏:コロナ禍は過去の危機では経営が揺るがなかった企業に大きな影響を与えています。例えば、その代表的な業種が鉄道会社です。多くの鉄道会社は2008年のリーマン・ショックでも、11年の東日本大震災でも乗客が激減することはありませんでした。しかし、コロナ禍は人の移動に制限をかけた。こうした初めての事態に鉄道会社は対応を迫られています。

 鉄道は保守管理に莫大(ばくだい)な費用が必要です。安全に資する出費なので乗客が減っても保守管理の費用は大きく減らせません。幸いなことに鉄道会社の多くは優良な不動産を所有しています。今後は「不動産開発を通じた魅力的な沿線開発の活性化」や「所有資産を分離して運営に特化」などの対応が重要かと思います。

鉄道会社は収益基盤が固いので積極的な財務戦略はこれまで重要でなかったように見えます。最近ではブラックストーン・グループが近鉄GHDから「都ホテル京都八条」などを買収して話題になりました。

橘田氏:これは一般的な戦略ですが、ここ数年は旺盛なインバウンド需要を捉えて、鉄道会社のみならず不動産会社もホテル投資に積極的でした。しかし、ホテル事業は需要がある時期でもそれほどもうかるビジネスではない。日本のホテル経営は宴会の運営などで多くの人手が必要となり、固定費が高くなりがちなためです。そのため、需要が落ち着くと途端に赤字が膨らむ構造となっています。そこで事業会社はホテルビジネスのボラティリティーの高さに初めて気づくのです。ですから、鉄道や不動産会社は自社でホテルビジネスを継続するか否かを再考する時期に差し掛かっています。

続きを読む 2/3 ホテル所有と経営の分離を鉄道会社に説明

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