飛行機のファーストクラスをイメージしたコンパクトホテルの運用を手掛けるファーストキャビン(東京・千代田)が2020年4月24日、東京地方裁判所に破産を申請した。インバウンド特需を狙った競合の新規参入による過当競争にさらされ、2018年3月期の最終損益は2億3700万円の赤字に落ち込むなど、経営は苦戦を強いられていた。そこに、新型コロナウイルス感染症の拡大が追い打ちをかけた。同社は1月31日に急逝した建築家の故大江匡氏が率いたプランテックグループの1社で、20年3月から岸田登氏が社長に就任して事業再建に乗り出したばかりだった。破産申請まで社長を務めた岸田氏にコロナ禍がホテル経営に与えたインパクトを聞いた。

ファーストキャビンの室内設備。オフィスビルや予備校校舎など既存のビルをホテルに用途変更して簡易宿所を展開するほか、空港にも設備を設けてきた(写真:共同通信)
ファーストキャビンの室内設備。オフィスビルや予備校校舎など既存のビルをホテルに用途変更して簡易宿所を展開するほか、空港にも設備を設けてきた(写真:共同通信)

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ファーストキャビンの稼働率が大幅に落ち込んだと聞いています。実際にどれほどのインパクトがあったのでしょうか。

岸田登氏:国内で新型コロナウイルス感染症の影響がほとんど見られなかった2020年3月期の第3四半期の稼働率は70%でした。それが20年1月に59%となり2月は54%と漸減しています。宿泊客が急減したのは3月からで、同月は27%に落ち込みました。ファーストキャビンの宿泊料は通常4000~6000円に設定しています。3月は施設によっては3000円を下回る料金を提示して稼働率の維持に努めました。3月20~22日の3連休ごろまでは世間の危機感も薄く、ビジネスマンの出張需要もあったのです。

 しかし、緊急事態宣言発令の噂が広がり始めたころから状況が変わりました。感染者数の増加が連日報道され、感染者が出た企業名などが伝えられました。私は「施設で感染者が出るリスク」を危惧しました。ファーストキャビンは簡易宿所であり、ビジネスホテルのような完全個室ではありません。宿泊者にはマスクを配布し、検温をするなどの対応を取りましたが、ラウンジやシャワーブースなど共用設備があるため、一般的なホテルよりも密に近くなる可能性が高かったのです。

 ファーストキャビンの施設数は全国で26になります。内訳は直営店が8施設(JR西日本との共同出資会社の解消により2施設が既に閉鎖)、フランチャイズ契約が9施設、運営受託(MC)契約が9施設となります。しかし、こうした経営形態の違いは宿泊客には分かりません。感染者が出た施設としてファーストキャビンの名が全国に報道されれば、FC施設のオーナーに迷惑がかかるので、直営施設とMC施設については4月6日から休業しました。

4月24日の破産申請をどのように従業員に伝えたのでしょうか。

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