4月13日に緊急事態宣言の対象地域での工事中断を発表した清水建設。同日から発注者と交渉を始め、既にストップした工事も出てきた(写真:ロイター/アフロ)
4月13日に緊急事態宣言の対象地域での工事中断を発表した清水建設。同日から発注者と交渉を始め、既にストップした工事も出てきた(写真:ロイター/アフロ)

 ゼネコン各社に「工事中断」の動きが広がっている。新型コロナウイルスの防疫対策として、4月13日に清水建設が、緊急事態宣言の対象地域にある作業所を一時閉所すると発表したのに続き、15日には大林組と戸田建設が施工中の工事を原則中断すると発表した。大林組は8日時点で「工事の原則継続」を表明していたが、従業員2人の感染が判明したことを受けて方針を転換した。

 工事中断はプロジェクトの発注者の同意も必要だ。ゼネコン各社の決断を受け、建設現場は実際に止まったのだろうか。清水建設は工事中断の発表当日から案件ごとに発注者と交渉を進めている。施工者からの打診を受けて、工事のストップを受け入れた発注者も現れている。

 地上12階のオフィス棟「(仮称)日本橋堀留町プロジェクト」の施工を清水建設に発注した日本土地建物(東京・千代田)はその1社だ。19年9月に着工したこのプロジェクトは基礎工事まで進んでいたが、緊急事態宣言が終了する予定の5月6日まで工事の一時中止を決定した。同社経営企画部広報室によると、「清水建設の発表があってすぐ、担当者同士が話し合い工事を中断した」。当初の完成予定は21年3月末。約3週間の中断でどれくらいの遅れが出るかはまだ検証中だが、「今日の状況では止めざるを得ない」(広報室)とする。

 緊急事態宣言の対象地域である千葉県でも工事が止まった。千葉銀行では、本部棟建て替え工事を4月14日から5月6日までストップさせる。地上16階の本部棟の着工は18年7月で、工事は6~7割ほど進捗しており、20年9月に完成予定だ。現場ではクレーンなどが設置されている。千葉銀行では近隣住民に工事の中断を伝えており、「工事は行っていないものの、安全対策のために作業員が高所作業用クレーンなどの解体作業に当たっている」(広報部)という。

マンション開発では協議難航も

 千葉銀行のプロジェクトは清水建設の単独プロジェクトではない。清水建設が筆頭会社となる「清水建設・大成建設・新日本建設・旭建設共同事業体(JV)」の案件だ。大成建設は「JVのプロジェクトについては筆頭会社の意向に従う」(コーポレート・コミュニケーション部広報室)と説明する。

 大成建設は4月16日時点では、緊急事態宣言の対象地域内にある作業所の工事について、個別に中断・継続を協議するとしているが、情勢が刻々と変化しているため、今後対応が変わる可能性もある。

 複数の開発プロジェクトが稼働中のJR東日本では、案件ごとに協議を進めている。清水建設に発注した建設事業は、浜松町駅の北東でホテルや劇場を整備する「(仮称)竹芝ウォーターフロント開発計画」をはじめ、板橋駅や渋谷駅の改良工事など。日常的に利用客が使う施設も含まれるため、工事の内容を精査して対応を協議する。また、工事の中断に関する協議は、清水建設に限らずゼネコン各社と進めているという。

 プロジェクトがBtoB(企業向け)である場合は、施工者と発注者の協議が比較的スムーズだ。しかし、マンション開発など共同住宅を購入者する第三者の利害が絡む場合は協議の難航も予想される。

 新型コロナウイルスのまん延を防ぐために建設会社が現場を閉鎖するなどして工事完了が遅れた場合、施工者と発注者の契約において災害などに類する「不可抗力」が認められるかどうかは、個別案件の契約上の定めによることになる。

 マンションの引き渡しが遅れた場合、開発に携わった販売主は購入者に対して仮住まいの家賃や遅延に対する補償が発生する。建設関連の法律に詳しい神楽坂キーストーン法律事務所の農端康輔弁護士は、新型コロナによる影響が明確な場合「発注者と施工者で補償を分担する可能性もあるが、仮に購入者からの責任追及があった場合は、引き渡しの遅れは不可抗力として突っぱねる事例が多くなるのではないか」と説明する。

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