(写真:PIXTA)
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 「新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、この1カ月、賃貸契約の1割以上でキャンセルが発生した」――

 ため息をつくのは、不動産の賃貸・売買を仲介するエース不動産(会社名はA-S、東京・新宿)の若井直也代表だ。契約キャンセルの多くは今春、東京で就職や入学が決まっていた人によるものだという。若井代表は、「アパートなど賃貸物件の契約解約者の4人に1人は、勤務予定先の企業から内定を取り消された顧客だった」と説明する。

 不動産データを分析する東京カンテイによると、アパートなど賃貸住宅の契約は大家と借り主との間で結ばれたもので、その全体の動きをリアルタイムで捉えるのは難しいというが、エースの若井代表は「都内の同業者からも、人件費削減のための内定取り消しによるキャンセルが3月に急増したと聞いている」と話す。

 法的には、賃貸契約が成立した後なので、大家は敷金や礼金を借り主に返却する義務はないが、事情が事情だけに、鍵の交換など必要経費を除いた入金分を返すケースも少なくない。エース不動産でも、仲介手数料からスタッフの人件費や物件案内の交通費などを除いて返金しているという。

 解約の波は新社会人だけではない。学生にも及んでいる。東京の大学に合格した地方の学生が契約解除する例も多いようだ。新型コロナの流行が一段落するまで上京を見送り、契約を結んでいた賃貸をいったん取りやめる相談が相次いだ。

 7日には政府が東京など7都府県を対象に、法律に基づく「緊急事態宣言」を発令した。宣言の効力は5月6日までとなっているが、新型コロナの感染の広がり方次第では事態が長期化する可能性も残る。終息の兆しが見えても、大学によっては講義をウェブで実施するといった安全策を続けるケースも想定される。そうなると、賃貸アパートなどの需要はさらに先延ばしになることも考えられるだろう。

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