愛知県は民間企業を活用することで、負の遺産となりがちな“ハコモノ行政”をビジネスに変える「愛知モデル」を模索している。その試金石となる愛知県新体育館整備・運営の事業者が、前田建設工業とNTTドコモを中核としたコンソーシアムに決定した。

愛知県がPFI法に基づいて進める新体育館整備・運営事業で2025年夏にオープン予定の施設鳥瞰(ちょうかん)パース。設計・建設は前田建設工業、維持管理・運営はNTTドコモが代表企業を務める(資料:愛知県)
愛知県がPFI法に基づいて進める新体育館整備・運営事業で2025年夏にオープン予定の施設鳥瞰(ちょうかん)パース。設計・建設は前田建設工業、維持管理・運営はNTTドコモが代表企業を務める(資料:愛知県)

 大相撲名古屋場所が開催される既存の「愛知県体育館」は1964年に建設された。築57年の老朽施設は国際大会の基準を満たさず、2017年から新設移転が検討されてきた。県は2月17日に「愛知県新体育館整備・運営等事業」の落札者として、設計・建設で前田建設工業、維持管理・運営でNTTドコモが代表企業を務める「Aichi Smart Arena」を選出したと発表した。

 新体育館は26年秋に愛知・名古屋で開催するアジア競技大会で活用する計画で、25年夏のオープン予定だ。

 大村秀章知事は体育館の新設に当たって、民間企業のノウハウを積極活用するスキームづくりに腐心した。行政が大規模施設を建てる際、運用期間の収益モデルまで考慮する例は少ない。だが、世界を見渡せばスポーツや音楽イベントで利用する都市部のアリーナは、最先端の映像技術やICT(情報通信技術)の導入により、収益を上げる“ドル箱”となっている。そこで県は「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)」に基づき、新体育館の整備を推進してきた。

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