科学技術は未来の食をどのように変えるのだろうか。

 2020年12月17日から3日間開催されたフードテックイベント「スマートキッチン・サミット・ジャパン 2020」に登壇したOPEN MEALS(オープンミールズ)の榊良祐代表は、今日の技術の延長線上にある食の新たな可能性を具現化するプロジェクトに取り組んできた。

 味覚センサーや3Dスキャナーを使ってすしの味や形状などをデータ化し、別の場所にデータを転送して3Dフードプリンターで出力する「SUSHI TELEPORTATION」(すしテレポーテーション)など、ユニークなアイデアを実現している。榊代表が思い描く「食の未来」について語ってもらった。

榊良祐(さかき・りょうすけ)氏。OPEN MEALS(オープンミールズ)代表。2004年アートディレクターとして電通入社。16年からフードテック領域に集中し、米テキサス州で開催される最先端テクノロジーの祭典SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)で18年に発表した「すしテレポーテーション」が世界の注目を集めた。現在は「22世紀の幸福な食文化共創」を掲げるオープンミールズを率い、アートプロジェクトや企業共創プロジェクトを推進する。これまでの仕事に、全都民配布の防災ブック「東京防災」や民放公式テレビポータル「TVer」などがある。

オープンミールズでは「食をデジタル化」するアイデアで未来の食のかたちを提案しています。最近ではどのようなプロジェクトを手掛けたのでしょうか。

榊良祐氏(以下、榊氏):オープンミールズは「食文化の共創」を掲げ、フードとテクノロジー、アートを掛け合わせた未来の食を共創するプロジェクトです。電通に限らず、社内外のプロフェッショナルが集まってプロジェクトを進めています。

 20年3月には「サイバー和菓子」を発表しました。ひと言で言えば和菓子を3Dフードプリンターで作製するアイデアです。和菓子には季節の移ろいを感じる日本文化が背景にあります。私の友人に和菓子職人がいて「気候変動で季節の境目が分かりにくくなった」と話していたのが気になっていました。そこで、季節の境目に食べられていた和菓子の味を、気象データの分析から再現するプロジェクトに取りかかったのです。

 気候について衝撃を受けたニュースがあります。気象庁は1953年から続けていた季節観測のバロメーターである「生物季節観測」の調査項目を20年いっぱいで植物 34 種目、動物 23 種目から、植物6種目9現象に削減することを発表しました。

 サイバー和菓子は過去の気象データからその時代に食べられていた和菓子を再現できます。また、未来の気象予測データの活用も可能です。例えば、環境省が100年先の天気を予測していて、2100年にはスーパー台風が日本に上陸するといわれています。そうした未来に食べると思われる和菓子を3Dフードプリンターで再現するのです。サイバー和菓子のプロジェクトは20年6月に首相官邸からも世界に向けて発信されました。

ロボットアームがてんぷらを揚げる

大胆な未来予測の中から食の進化を探る試みなのですね。

榊氏:わくわくするような未来の食の風景を可視化することが私の役割だと考えています。現在は15の食の未来ビジョンについて具現化に向けた取り組みを進めています。

 ビジョンが重要なのは、飛躍的な構想を打ち出すことで、現時点で必要な技術を洗い出せるからです。ビジョンのもとに技術者が集まり、共創を通じて実現化します。「面白い!」と感じた人に私たちの仲間になってもらい、実現に向けて一緒に動き出すことが目的です。そうした未来への提案をいくつか紹介させてください。

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