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 レナウンの経営破綻やワールドの店舗閉鎖など暗いニュースが続くアパレル業界。そんな中で逆に勢いづいているのが、女性のキャリア服に特化する新興ブランド「kay me(ケイミー)」だ。2011年の創業でオンライン販売が主軸だが、百貨店の要請に応える形で店舗の新設を加速する。「共感の時代が来る」と話す経営コンサルタント出身の毛見純子社長に、先読みのコツなどを聞いた。

毛見純子(けみ・じゅんこ)氏
早稲田大学第一文学部卒業後、ベネッセコーポレーションに入社。プライスウォーターハウスクーパース、ボストン・コンサルティング・グループで経営戦略コンサルタントを務め、2008年にマーケティングコンサルティング会社を設立。自らの経験とマーケティングメソッドを生かし、11年にキャリア女性向けアパレルブランド「kay me」を創業した。15年には欧州に進出し、英国商工会議所が選ぶ「アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー」や日本政策投資銀行「女性起業大賞」などを受賞。ケイミーは現在オンラインショップと7店舗で展開、年内に新たに3店舗の開設を予定する。(写真=吉成大輔、以下同)

新型コロナウイルスの猛威がアパレル業界を襲っています。

 3~4月に新型コロナの影響が広がり、この時期に春夏物を盛り上げて、その後のセールで大半を売り切るという百貨店の販売モデルが吹き飛びました。海外での生産が安定しないので、秋冬物の入荷も見通せなくなり、今後1年は回復のメドが立ちません。そうした中でも固定費は出ていくので、店舗を閉める動きが相次いでいます。

ケイミーの経営にはどの程度の影響がありましたか。

 店舗休業の影響はあったものの、オンラインでの売上高が3割ほど増え、全体の業績へ貢献しました。当社は数十万人のオンライン会員などとダイレクトにつながっていることが強みです。コロナ後の対応で、例えば服の組み合わせの相談にスタッフが乗る「オンラインカルテ診断」サービスを展開するなど様々な挑戦ができました。

 21年8月期はオンラインの機能性改善および付加機能の効果が表れてきており、またリアル店舗が増えることもあり、売上高は前年比2倍となる見通しです。

D2Cへの移行の波が一気に押し寄せた

新型コロナの影響が広がる前と後で、業界模様はどう変わりましたか。

 私たちは、お客様との間に業者を挟まない「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」モデルを基本としています。コロナ前まで、投資家や関係者の間でD2Cの将来性は懐疑的だったと思います。アメリカ市場では既にアパレル売上高の1割を占めていると説明しても「ファッションのeコマース比率の高い欧米と日本のD2Cブランドへの反応は違うのではないか」などと言われていましたから。

 コロナを機に、サステナビリティー、服の快適性や洗えることへの関心が一気に高まり論調が変わっていると感じます。変な言い方ですが、コロナが1つのトリガーとなり、顧客の声を製品作りに反映し、廃棄ロスを抑える我々のようなD2Cへの移行の波が一気に押し寄せたという感じです。これは長期のトレンドになるでしょう。

百貨店の衣料品販売はコロナ以前から下降傾向にありましたね。

 「ユニクロ」が販売を広げたのが1990年代。2000年代初頭に欧米系のファストファッションが浸透し、百貨店で販売するブランドは大量生産だけど少し高いという位置づけになりました。そんな中、百貨店と大手アパレルがテコ入れしたのが価格です。

 セールを前倒しし、消費者に「安い」と感じてもらえる期間を増やしたのです。2000年に入ってから、セール価格で売る時期を競うように前倒しし、「プロパー」と呼ばれる定価で売れる期間を短縮していきました。

 百貨店に店子(たなこ)として入っているアパレル側は、セールの前倒しに従うため、8~9割をセールで売っても利益を出す必要に迫られました。ここで表向きの定価を維持しつつも、原価サイドのコストを切り詰めていく流れが加速しました。

 例えば着丈を短く、パターンをシンプルにし、用尺(使う生地の量)を少なくしました。また、素材のクラスを下げ、肌触りがあまり良くないものに変えていきました。単価を下げるため、社内にいるデザイナーなどクリエーターの数を減らし企画会社へ委託し、人件費の安い海外工場での大量生産が不可避となったのです。