新型コロナウイルスの感染収束の切り札として、世界中で開発が進むワクチン。日本において唯一、臨床試験に入っているのが大阪大学発の創薬ベンチャー、アンジェスだ。米国や英国の大手が先行する中、「日本製のワクチン」を持つ意義はどこにあるのか。新型コロナとは何かという純粋な疑問からワクチン開発の見通しまでを、アンジェス創業者で大阪大学寄附講座教授の森下竜一氏に聞いた。

<span class="fontBold">森下竜一[もりした・りゅういち]氏</span><br> アンジェス創業者、大阪大学寄附講座教授。1987年、大阪大学医学部卒業。米国スタンフォード大学循環器科研究員・客員講師、大阪大学助教授を経て、2003年から大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座教授。日本脳血管・認知症学会理事長、日本遺伝子治療学会副理事長などのほか、内閣官房健康・医療戦略室戦略参与、大阪府・大阪市特別顧問も務める。
森下竜一[もりした・りゅういち]氏
アンジェス創業者、大阪大学寄附講座教授。1987年、大阪大学医学部卒業。米国スタンフォード大学循環器科研究員・客員講師、大阪大学助教授を経て、2003年から大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学寄附講座教授。日本脳血管・認知症学会理事長、日本遺伝子治療学会副理事長などのほか、内閣官房健康・医療戦略室戦略参与、大阪府・大阪市特別顧問も務める。

新型コロナウイルスの新規感染者が再び増えています。現状をどのように捉えればよいでしょうか。

森下竜一・大阪大学寄附講座教授(以下、森下氏):非常にまずい状況になってきているのは確かです。感染が全国的に広がり、大阪府などでは重症者が増えています。地域によっては、病床の使用率が高まり、高齢者の家庭内感染も頻発しています。市中感染も拡大傾向。今後はさらに逼迫する局面がありそうです。

当初は夏に一度、感染が収まるのではないかという説もありました。

森下氏:完全に誤情報でした。私はもともとその説に否定的で、高温多湿なシンガポールやイランで流行しており、さらに夏になるとクーラーを使って部屋を密閉するので、むしろ増えると思っていました。残念ながら、それが当たった感じです。

重症化患者が一時的に減ったのには、どういった理由があったのでしょうか。

森下氏:1つは感染者に若者が多かったこと。もう1つは、医者が新型コロナへの対応に慣れてきたことです。病気の進展がわかれば、対応できることが増えます。例えば、この症状にはステロイドが効くなど、必要な対処ができる。死亡者が減っているのもそのためです。ただ最近、重症化が早まっているという話があります。早く出て早く治るのならいいですが、早く重症化し症状が長引くと、医療的には難しくなります。

沖縄県など地方部での広がりが深刻です。

森下氏:これからが本番だと感じています。患者数もありますが、新型コロナにおいては、医療施設と患者の比率の問題が大きい。医療体制が充実していない地方で大規模なクラスターが出ると、バランスは一気に崩れてしまいます。そういった地域では高齢化が進んでいるので非常にリスクが高くなります。

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