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 新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済を揺るがしている。市場低迷で企業価値が落ち込み、ソフトバンクが主導するビジョンファンドが巨額損失を出すなど投資サイドでもネガティブなニュースが目立つ。活況だったスタートアップ投資は今後、どのように変化するのか。米ベンチャーキャピタル(VC)、ペガサス・テック・ベンチャーズのアニス・ウッザマンCEO(最高経営責任者)に話を聞いた。

アニス・ウッザマン氏 ペガサス・テック・ベンチャーズCEO。高校時代にMade in Japanの高い技術力に憧れ、来日を決意。日本の文部科学省から奨学金を受け、東京工業大学工学部を卒業した。その後、米オクラホマ州立大学工学部で修士号、東京都立大学(現・首都大学東京)工学部で博士号を取得。米IBMなどで技術開発、戦略的投資を主導した後、2011年にシリコンバレーでベンチャーキャピタルを設立した。世界の最新技術分野の優れたスタートアップを発掘し、これまでに170社に投資。次世代を担う起業家、学生の指導にも注力している。

米国のベンチャーキャピタル(VC)投資件数が1~3月に前年比3割弱減少したという報道がありました。事業環境にはどのような変化がありますか。

ペガサス・テック・ベンチャーズのアニス・ウッザマンCEO(以下、ウッザマン氏):全体でみるとネガティブな要素はあるが、当社の1~3月の投資金額は前年同期の6倍に増えた。4月にはモバイル動画「Quibi(クイビ)」に40億円近く投資した。TikTokのようなショートコンテンツをプロが作って提供する将来有能な会社だ。宇宙会社のスペースXにも25億円ほど追加で投じた。今も世界で50件前後を並行して走らせている。

 仕事の仕方は変化した。コロナでわかったことの1つが、在宅でもオフィスと差異のない効率で仕事ができるということだ。生産性はむしろ向上している。1日1~2時間の移動、運転時間はやはり長く、この時間をうまく使うことで生産力が高まっている。インタビューなど全てのことがリアルからオンラインに移行したが、活動に支障はない。当社の事業会社を含めて35の主要顧客がいるが、慎重な姿勢になっているのは1割程度だ。

スタートアップはレイオフ(一時解雇)などを通じ、手元資金の確保に躍起です。

ウッザマン氏:スタートアップの資金調達は一般的に1サイクル12~18カ月。コロナ が早期に収束するとは思えず、コロナ下で一度は資金調達しないといけない。そういう環境のもとでは寿命を少しでも延ばすため、経営者が運営を見直すのは当然だ。それができないスタートアップは潰れる。これまで通りの経営をしているような会社は投資家から信頼されない。

 スタートアップの生き残りテストは、我々にとってはチャンスだ。強い会社と弱い会社を市場が区分けしてくれるからだ。今後は、既存の投資家からつなぎ資金を集める「ブリッジラウンド」が増える。スタートアップは人件費の抑制や事業の選別などで資本政策を立て直し、投資家に自信を持たせる必要がある。一方で、株式の価値を下げてお金を集める「ダウンラウンド」も増えるだろう。ブリッジを経て、次回のアップラウンドにつなげられることが、強い会社の証。目利きを市場がサポートしてくれる。