積水ハウスが4月に開催する定時株主総会で、経営陣とのプロキシファイト(委任状争奪戦)に挑む元会長の和田勇氏。2年前に追い出されたことへの「復讐(ふくしゅう)」との見方もあるが、当人サイドはそれを否定する。和田氏を引き込んで株主提案を主導した積水ハウス取締役専務執行役員の勝呂文康氏と、元積水ハウス常務執行役員の藤原元彦氏(株主提案側の取締役候補)が日経ビジネスのインタビューに応じ、経緯や動機などを語った。
 積水ハウスへの株主提案を主導した積水ハウス取締役専務執行役員の勝呂文康氏(右)と元積水ハウス常務執行役員の藤原元彦氏(株主提案側の取締役候補)
 積水ハウスへの株主提案を主導した積水ハウス取締役専務執行役員の勝呂文康氏(右)と元積水ハウス常務執行役員の藤原元彦氏(株主提案側の取締役候補)

現役の取締役でありながら、積水ハウスに対し取締役刷新の株主提案をしました。どういった経緯があったのでしょうか。

勝呂文康・積水ハウス取締役専務執行役員(以下、勝呂氏):2017年春~夏に東京・五反田の土地売買に関する地面師事件が起き、18年1月に調査対策委員会の報告書が出されました。

 決裁に至る手続きがあまりにずさんで、社内に内通者がいたようにも映る内容でした。違法かどうかは司法が判断することですが、会社としては当然、ステークホルダーに開示すべき情報です。55億円のキャッシュが消え、しかも本来取るべき手順を順守していなかったわけですから。しかし、阿部俊則会長、稲垣士郎副会長ら4人の代表取締役が取り仕切る現体制は、報告書の公表を控え、都合の悪い部分を隠蔽してきました。

 19年10月に某経済誌が地面師事件の責任を問う記事を掲載した際、私の中でスイッチが切り替わる出来事がありました。直後の会合で一部の役員が「何を過去の話を掘り返そうとしているのか、放っておきましょう」と話し、笑い声すら漏れたのです。

 あの事件のために積水ハウスは現場で「土地を扱えない会社」と馬鹿にされ、営業担当者はつらい思いをしてきました。社内にもきちんとした説明をしていないのに、過去のこと、なかったことのようにするとは、組織の根っこが腐っていると感じました。ここで立ち上がらないと、会社の未来がないと考えました。

2年前の「クーデター」で退任した前会長兼CEO(最高経営責任者)の和田勇氏と共同で株主提案したのはなぜですか。

勝呂氏:4人の代表取締役と対峙するには、私1人では無理だと考えました。2年前の出来事があるので、世間から和田氏と阿部氏の確執とみられることは覚悟していました。しかし、我々のチームを結成する上で、和田氏の持つ人脈やパワーは不可欠でした。

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