
新型コロナウイルスにより、企業の人材採用も大きな影響を受けている。外出の自粛が広がっていることもあり、採用活動の基本である面接や会社説明会を実施することが困難になっている。
そのため、オンラインでの面接や会社説明会を導入する会社が増えている。特に東京都の小池百合子知事が3月25日に外出自粛を要請したことで、「『面接は1対1なので大丈夫』というスタンスだった企業までオンライン面接を導入し始めた」(採用コンサルティングなどを行う人材研究所の安藤健氏)。
学生側も就職活動のオンライン化に寛容な姿勢を示している。学生約29万人が登録する「ベネッセi-キャリア」が2月下旬に実施した調査によれば、ウェブでの説明会や面接について「利用したい」または「抵抗はない」と回答した学生は61.7%と半数を超えた。
とはいえ「オンラインできちんと評価できるのか」「評価してもらえるのか」といった不安は会社側、学生側双方にあるのが実情だろう。学生とのつながりや情報量が不足し、ミスマッチが起きることを懸念する声もある。
「アイスブレイク」が重要に
プリマハムは新型コロナの感染拡大に伴い、2次面接までオンラインで実施する方針を決めた。今後の状況によってはそれ以降の面接をオンライン化することも検討しているという。例年行っていたグループ面接など学生が密集する必要のある選考過程は取りやめる。採用担当者は「事態の推移を見守りつつ、役員面接もオンラインで対応できるように準備を進めている」と語る。
ただ、学生と直接会って向き合いたいとの思いも根強い。「入室時の所作や話す時の姿勢など、対面なら全体的な雰囲気を見られるが、オンライン面接はディスプレーからしか情報を得られない」(プリマハム採用担当者)と考えているためだ。
オンラインによる選考でも対面による採用と変わらず、自社にふさわしい人材を確保することができるのか。オンラインでの人材採用に乗り出した企業は、様々な工夫によって「壁」を乗り越えている。
「1時間の面接の内、15分くらいはアイスブレイクに使う」。こう語るのはカメラ・レンズメーカー、シグマ(川崎市)の人事課採用担当を務める小屋敷裕気氏だ。
アイスブレイクとは緊張を解きほぐすためのちょっとした会話や活動のこと。「ついつい話が盛り上がりすぎてしまうこともある」と小屋敷氏は笑うが、オンラインでの面接では、対面での面接以上にこのアイスブレイクが重要になると感じているという。
シグマは新型コロナの感染拡大を受け3月中旬に説明会の中止を決定。面接は3月下旬まで対面で実施していたが、4月以降は1次面接をオンラインで実施することを決めた。これまでも中途採用や遠方の学生を対象にオンライン面接を行ったケースはあったが、新卒採用の面接を本格的にオンラインで実施するのは今回が初めて。最終面接もオンライン化する可能性が濃厚といい、オンライン面接の重要性は増している。
2018年から採用活動をオンライン化しているUSEN-NEXT HOLDINGS。人事を統括する住谷猛執行役員は「学生の個性をどう引き出すかがオンライン面接の肝であり、面接官のテクニックが問われる」と話す。

20年の採用活動は新型コロナウイルスの影響もあり、エントリーから最終面接まで全てをオンラインで完結できるようにした。社員が自宅から面接に臨むケースもあるという。住谷氏は「採用活動のオンライン化はやり方次第で通常の面接と同じようにできる」と断言する。
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