日本や欧米でデジタル通貨に関わる動きが活発化している。日銀を含め各国中央銀行の動きの裏には、中国が突出して進めるデジタル人民元構想がありそうだ。デジタル通貨発行で何が起きるのか、中国の行動のどこに懸念があるのかを元日銀審議委員で野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏に聞いた。

1987年、野村総合研究所入社。90年に野村総合研究所ドイツ、96年には野村総合研究所アメリカで欧米の経済分析を担当。2004年、野村証券に転籍。07年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして日本経済担当。12年から5年間、日銀審議委員を務め、17年7月から野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト
10月以降、デジタル通貨に関わる動きが活発化しています。10月9日に日銀が「デジタル通貨に関する取り組み方針」を公表すると、13日にはG7財務相・中央銀行総裁会議で中央銀行がデジタル通貨を発行する条件として、透明性や法の支配などを挙げました。今、中央銀行がデジタル通貨への発言を強めている裏には、中国の発行への動きの突出ぶりがあるといわれます。どう見ますか。
木内登英・野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト(以下、木内氏):中国は確かに活発に動いています。中銀が発行するデジタル通貨をCBDC(Central Bank Digital Currency)と呼びますが、10月に中国の深センで市民5万人に1人当たり200元(約3100円)を配り、買い物などで実際に使えるようにして1週間にわたって実証実験をしました。さらに北京でも同様の実験を計画していると報じられています。

中国は2022年の北京冬季オリンピックまでにデジタル人民元の発行を目指しているとされ、深センの実験の前、9月にはデジタル人民元の普及を目指す「金融技術センター」の設立も公表しました。着々と準備を進めている状況です。
その狙いは2つだと思います。1つは人民元の国際化を進め、米国の金融覇権に対抗することではないでしょうか。
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