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新型コロナウイルスの収束はなお見えないが、焦点は経済と感染拡大防止をどう両立するかに移ってきた。第一波の感染拡大は、新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正し、緊急事態宣言を発出するまでの法適用の混乱に一因があった。危機管理が専門の福田充・日本大学教授は、現状の対応では「今後ワクチン開発後の接種に問題が起きる可能性もある」と指摘する。感染症関連の法制度とその適用のどこに問題があったのか。今何をすべきなのかを聞いた。

福田充(ふくだみつる)氏
日本大学危機管理学部教授、同大学院新聞学研究科教授。1969年生まれ。専門は危機管理学。著書に『テロとインテリジェンス~覇権国家アメリカのジレンマ』(慶応義塾大学出版会)、『大震災とメディア~東日本大震災の教訓』(北樹出版)など。現在、内閣官房・新型インフルエンザ等対策有識者会議メンバー。

新型コロナウイルスの感染拡大初期から政府の法制面での感染症対応には課題があると指摘され続けてきました。冬に向けて再度感染が拡大する可能性も否定できませんが、経済との両立も重要な問題です。今、法制、政省令などの施策で政府が留意すべき点はなんでしょう。

福田充・日本大学教授(以下、福田氏):課題はいくつもあります。まず1つは、2021年以降、新型コロナのワクチンができてきます。日本政府は、米ファイザーと英アストラゼネカからそれぞれ1億2000万回分の供給を受けることで基本合意しました。他にも協議中の製薬会社があります。

 ですが、誰に接種するのか、あるいは誰から、またはどの地域から使うのかといったことがまだ何も決まらず、明らかにされていません。治療薬もいくつかは承認されていますが、日本で感染が再拡大した際に量が本当に足りるかどうかは不透明です。これも感染者が急増するようなことがあれば、同じ問題に直面します。

 しかし、現状はワクチンについて費用は国の負担で無料として、接種は努力義務とする方針が決まっただけです。これは非常に問題の多い状況だと思います。ワクチンができても供給がすぐにあるわけではないし、医療関係者の数もありますから、いきなりすべての国民に接種することはできません。対象者の優先順位や場所に優先度をつけるなら、それも早く決めて社会に説明する必要があると思いますが、なかなか動いていないのが現状です。

長年進めてきた感染症対応策が使えない事態に

新型コロナを巡っては、政府は当初、感染症法上の「指定感染症」に指定し、感染拡大防止の対応に混乱が生じました。結局、3月になってより強い対策の取れる新型インフルエンザ等対策特別措置法を改正して、緊急事態宣言につなげました。初動の対応にどのような問題があったのでしょう。

新型コロナウイルス対策の初動で指摘された法制面や危機管理のあり方についての課題は今も残っている(写真:共同通信)