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最終コーナーを迎えた米大統領選の焦点の1つは対中政策。中国は、覇権国になろうとしているのか。米国、そして世界はどう対処するのか。ビッグデータを基に世界で起きる様々な事象を分析する水野貴之・国立情報学研究所准教授は、中国政府が国有企業を通じて世界の企業の株式をどのように保有しているのかを解析している。そこから見えてきた意外な事実とは。

水野貴之(みずの・たかゆき)氏
国立情報学研究所准教授

2005年、中央大学大学院理工学研究科博士後期課程修了、博士(理学)。日本学術振興会特別研究員。一橋大学経済研究所講師、筑波大学システム情報系准教授を経て、2013年より現職。総合研究大学院大学複合科学研究科准教授を併任。専門は計算社会科学、経済物理学。近年は政治経済とデータサイエンスの融合に取り組んでいる。

まず、どういう研究をされているのかからうかがえますか。ビッグデータを基に何をどのように解析しているのですか。

水野貴之・国立情報学研究所准教授(以下、水野氏):一言でいえば、ビッグデータ分析や大規模シミュレーションで、世界の複雑なネットワークを解析するAI(人工知能)を研究しているということになります。

具体的にいうとどういうことでしょう。最終盤を迎えた米大統領選でも対中政策は焦点の1つになっていますが、中国が行っている世界の企業の株式保有行動についても分析しているそうですね。

水野氏:国際政治学者である早稲田大学の栗崎周平准教授と北海道大学の土井翔平准教授と共同で研究しているものです。これを通じて見えたのは、中国政府が国有企業などを通じて世界の企業の株式を大量に保有していることです。上場・非上場問わずです。この膨大な株式保有データを基に中国政府が今、実態としてどのような力を持っているのかを解析しています。ただ、これは私自身としては、様々な研究・解析の一部分にすぎません。

危機のたびに世界の企業の株式保有が増えてきた

中国が南沙諸島に建設する灯台の起工式(写真:新華社/アフロ)

昨年末、中国の国有送電会社がフィリピンの送電会社の株式を大量に保有していることが明らかになり、フィリピン国内で大きな関心を集めました。中国政府の考え方次第でフィリピンの送電網が止まることもあり得ると指摘されました。そうしたことですか。

水野氏:実際にそうした行動に出るかどうかはともかくとして、フィリピンの国会議員向けの内部報告書に取り上げられたようです。

 私は世界の上場・非上場4900万社の株式保有構造データを解析してみました。1億人の株主がいて、誰がどのような影響力を行使できるかをみたのです。これでいうと、中国政府は国有企業などを通じて世界の1万3000社を間接所有しています。これは、対象の最終的な意思決定に入ることができる企業数です。その売上高は約7兆3900億ドルにも上ります。