2010年代前半の業績急落から事業ポートフォリオの転換で復活したAGC。「AGC、『両利き経営』の真骨頂 成熟事業も深掘りで勝ち尽くす」でも見たように、既存事業を再活性化しながら、新規事業を育てる独自の戦略を展開し、高収益会社となった。宮地伸二・副社長CFO(最高財務責任者)にその取り組みを聞いた。

■本シリーズ連載ラインアップ
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AGC、「両利き経営」の真骨頂 成熟事業も深掘りで勝ち尽くす
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「小が大を飲む」巨額買収の勝算は 昭和電工・高橋社長に聞く
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・両利きの経営は「抜けのないマネジメントで」 AGC宮地副社長(今回)

宮地伸二(みやじ・しんじ)氏
宮地伸二(みやじ・しんじ)氏
1983年3月、上智大学理工学部卒。90年8月、旭硝子(現・AGC)入社。2010年1月、執行役員 社長室経営企画グループリーダー就任。11年ハーバード・ビジネス・スクールAMP。13年10月、ガラスカンパニー北米事業本部長などを経て15年3月、取締役、16年1月CFO、18年1月代表取締役、20年3月副社長。

この10年余りでAGCの事業構造は大きく変わりました。営業利益で見ると、2010年12月期には当時最高の約2292億円に達し、その8割は液晶ディスプレー用ガラスなど電子事業が担っていました。ところが、液晶テレビなどの急激な価格下落と共にディスプレー用ガラスも値段が急落し、14年12月期には営業利益は3分の1以下の約621億円に落ちました。そこから事業のポートフォリオ転換を進め、21年12月期には約2062億円に復活。その約7割を化学品で稼ぎ出すようになりました。業績急落時に、まずどうしようと考えたのですか。

宮地伸二・副社長CFO(以下・宮地氏):まず、2000年代に入った辺りの頃のことからお話ししましょう。

 当時は(デジタル家電が大きく伸びて)ディスプレー用ガラスで稼いでおり、ほとんど「一本足打法」と呼ばれてました。ところが09、10年ごろから価格下落が急激に起きて、14年まで4期連続の減益になったのです。14年の営業利益は最近のボトムですね。株式市場では、このままでは厳しいのではないかと言われた時期でした。

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