カメラなど映像事業を2021年1月に売却し、今年4月には祖業の顕微鏡など科学事業を売却前提に分社化したオリンパス。「祖業も売却するオリンパス ガバナンス改革が支える本業集中特化」で見たように、医療事業に徹底して集中する。例を見ない「選択と集中」で、高収益でグローバルな医療技術会社を目指すという。竹内康雄・社長兼CEO(最高経営責任者)にその狙いと取り組みを聞いた。

■本シリーズ連載ラインアップ
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祖業も売却するオリンパス ガバナンス改革が支える本業集中特化
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業界の常識を変えた「蛍」 ニチガス、DXから生まれた新事業
「小が大を飲む」巨額買収の勝算は 昭和電工・高橋社長に聞く
・カメラも祖業も切り離し オリンパス竹内社長が語る「選択と集中」(今回)

竹内康雄(たけうち・やすお)氏
竹内康雄(たけうち・やすお)氏
1980年3月、中央大学卒業。同4月、オリンパス光学工業(現・オリンパス)入社。09年6月、執行役員就任。12年4月、取締役専務執行役員就任。16年4月、副社長を経て19年4月から現職(写真:清水真帆呂)

オリンパスは消化器内視鏡では世界シェア70%を持っています。その最大の柱である医療事業に徹底して集中しようとしています。狙いはどこにあるのですか。

竹内康雄・オリンパス社長兼CEO(以下・竹内氏):私は若い頃から米国などで長く海外駐在を経験してきたのですが、そのせいかグローバル経営ということが意識にずっとあったのです。市場やお客様をベースにした効率的な経営というようなものです。でも、実態はなかなかそうではなくてずっと違和感を抱いてきたのです。

 時を経て2012年に(取締役専務執行役員となって)経営の一翼を担うようになり、企業価値を継続的に向上させるとはどういうことなのかを考えました。

 (カメラなどの)映像事業は、その頃から非常に状況が厳しくなっていきました。でも、映像事業をどうこうしようではなくて、企業価値向上のためにそれをどうするか。そして、医療事業に特化していくべきだろうと考えました。その上で映像事業(の売却)があり、今年、(顕微鏡などの)科学事業も分社しました。この動きの中で企業の存在価値とは何かまで見直しました。

映像、科学事業とは経営を分けて企業価値を上げる

「選択と集中」という考え方は1990年代からありますが、ここまで思い切ったケースは珍しいと思います。医療と映像、科学事業が残っていた20年3月期の営業利益率は、内視鏡が25.7%、治療機器が12.1%(この2つが医療事業)、科学が9.5%、映像は104億円の赤字でした。株式市場からは「医療事業以外の2事業があることで全体の収益性が下がっている」との指摘もありました。事業間のシナジーも含め、選択と集中をどう考えたのですか。

竹内氏:シナジーがなくなるということではないです。ただ、今までは、科学事業と医療事業は技術的なシナジーはあっても、ビジネスとしては基本的にシナジーはありませんでした。そこで、経営としては分けて企業価値をより高めようと考え始めたということです。

医療事業に集中して、具体的にどのように企業価値を高めようとしているのですか。

竹内氏:内視鏡では、ほかの科をやめるという意味ではないですけど、消化器、泌尿器、呼吸器の3科に集中していきます。例えば、消化器の内視鏡は、もともとは胃の中を見たいというニーズから70年前に始めました。診断のためでしたが、用途はどんどん広がっていきます。

 例えば、内視鏡とその中に入るメスや縫合装置を口から入れて、胃に達した後、そこに穴を開けて腹腔内の他の臓器の手術をするとか、そんなイメージです。開腹手術より、患者の体へのダメージは小さくなります。

 人口比で見た内視鏡を使える医師の比率だと、中国は日本の10分の1ぐらいとまだ少ない。ほかの新興国ももちろんそうです。そうした地域の内視鏡を使える医師の数を増やすことも重要な活動です。

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