市場の構造が変わる中で、どのように事業ポートフォリオを入れ替えていくか。日本企業の事業再編の在り方を検証していく本シリーズの2回目は、物言う株主を経営陣に迎え入れるガバナンス改革と並行して大胆な本業への集中特化を進めるオリンパスの事例を取り上げる。
■本シリーズ連載ラインアップ
・さらば「現金貯め込み」経営 昭和電工はなぜ日立化成を買ったのか
・祖業も売却するオリンパス ガバナンス改革が支える本業集中特化(今回)
事業ポートフォリオの再構築において、日本企業の間で長年言われてきた「選択と集中」。それを徹底的に取り組んでいるのが、内視鏡大手、オリンパスだ。
同社の事業は、最大の柱の内視鏡と治療機器などの医療事業(2020年3月期の売上高に占める比率は約80%)と、祖業である顕微鏡などの科学事業(約13.2%)、そしてカメラなどの映像事業(約5.5%)で長年構成されてきた。それを、21年1月に映像事業を売却し、22年4月には科学事業も売却を前提に分社化し医療に集中することとしたのだ。
竹内康雄社長兼CEO(最高経営責任者)はその背景について、「それぞれが別の経営にすることで企業価値をより大きくできるという考え方を取った」と言う。

目指したのは、医療技術でグローバルに高い競争力を持つ高収益企業になること。収益性の高い医療事業に特化し、19年11月に公表した中期の経営戦略では23年3月期までに営業利益率20%を達成するとした。そのために、対象とする診療科も内視鏡、治療機器に強い消化器科、泌尿器科と呼吸器科に集中することとしたのである。

選択と集中型の事業再編にしても、ここまで大胆なケースは珍しい。思い切った集中をすれば、市場を自ら狭めることになりそうな恐れを感じるためだ。だが、オリンパスはそれでも踏み込むことで企業体質を大きく変え始めた。
各事業がそろっていた20年3月期の事業別営業利益率は、内視鏡が25.7%、治療機器が12.1%、科学が9.5%、映像は104億円の営業赤字(売上高436億円)だった。「技術的なシナジーは残っている」(竹内社長)が、「医療事業以外で全体の収益性を下げていた」(みずほ証券シニアアナリスト、森貴宏氏)状況を変えることに踏み切った。
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