日本の大企業が大型買収と事業売却を次々と行うケースが増えてきた。市場構造が変わる中で生き残るために、事業ポートフォリオの入れ替えに躍起になっている。現金はため込むが、資本効率は上がらない。日本企業にありがちな経営に決別するための方法を、実践している企業のケースから探っていく。初回は、2020年、日立化成(当時)を約9600億円で買収した昭和電工の大胆な事業再編を取り上げる。
「この会社は成長事業がないなぁ」
昭和電工の高橋秀仁社長は、メガバンクから2015年秋に移ってきて間もない頃、自社の事業を分析してそう感じた。
当時、同社の中核は、エチレンなど石油化学品、モノマーなど機能性化学品、そしてアルミ製品やハードディスク用基板など。市場としては成熟化し、長期的に伸び続ける分野ではない。M&A(合併・買収)や経営戦略を主管する執行役員戦略企画部長に翌16年1月、就任した高橋氏は事業ポートフォリオ自体を見直す必要があるとみたという。
それから約4年後の20年4月、同社は、半導体向け電子材料や電動化の進む自動車の関連素材に強い日立化成(現・昭和電工マテリアルズ)を約9600億円で買収した。発表した19年末時点の昭和電工の時価総額、約4450億円に対して日立化成のそれは約9520億円。「小が大を飲む」形の巨額買収は、産業界を驚かせたが、それだけではなかった。

21年になると、昭和電工は採算性の低いアルミ缶、アルミ圧延、食品用ラップ、プリント配線板、セラミック、鉛蓄電池の各事業と上場子会社の化学品商社、昭光通商を次々と売却していった。その企業価値は約1700億円に達した。
大型買収の一方での多数の事業売却で、昭和電工は、化学品の川上寄り成熟市場中心の事業ポートフォリオを大きく変えた。
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