6月22日、日本電産を世界一のモーターメーカーに育てた永守重信氏の後を継いで、関潤社長がCEO(最高経営責任者)に就任した。同社の成長のカギとなる電気自動車(EV)市場は2024、25年にも急拡大が始まり、市場は激変すると関氏はみる。強みのスピード経営は絶対に変えず、EV用モーターでも世界一を目指す。

永守会長の後を継いでCEOに就任しました。企業としての意思決定の仕方など、これまでと変わりますか。

関潤社長(以下関氏):変えるものと変えないものはしっかり分けていきます。経営のスピードは一番大事な部分で、それは全く落としません。当然、従来、会長が決定していたものを私が決めるようになるという権限の委譲は、どんどん進んでいきます。そのとき重要なのは、日々の中で決めていかないといけないことを私と会長の間で直結してやっていくことだと思います。

 (日本電産に入社して)1年以上、一緒にやっているので、会長とは感覚が非常に似てきています。私がこうだと思うことで会長が違う、というケースは100に1つもないですね。

関潤(せき・じゅん)氏
1986年4月、日産自動車入社。2014年4月、専務執行役員、19年12月、執行役副最高執行責任者(副COO)に就任。20年1月に特別顧問として日本電産に入社し、同4月に社長執行役員COO、同6月に代表取締役社長執行役員COOとなった。21年6月、CEOに就任(写真:太田未来子、以下同)

新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済は昨年停滞しましたが、自動車や電機などの製造業は途中から回復し始めました。幅広い種類のモーターをそうした企業に売っている側から見て、足元の需要動向はどうですか。

関氏:自動車、家電、それから通信の5G関連など多くの商品群の需要は旺盛ですね。家電でいえば、冷蔵庫や掃除機なんかもものすごく売れてますよ。巣ごもり需要はまだ続いていますね。みんな家にいる。買ってくる食材が増える。そうすると10年使った小さい冷蔵庫はもう大きいのにしようと。掃除機もコードレスの軽いのが出ている。今までの掃除機の置き換えではなくて追加ですよね。車も需要はしっかりしています。

半導体、銅、アルミ、鉄、樹脂……、さまざまなものが不足

一方で、半導体不足が深刻になっています。影響は相当に大きいようですが。

関氏:需要は旺盛なんですが、世界的な部品・素材の供給不足や物流の問題が起きて、作る側の障害になっています。半導体といわず、銅、アルミ、鉄、樹脂など、さまざまなものが足りてないですよ。もっぱら半導体のことがいわれるけど、そうじゃない。全般的に足りないです。

 これは需要が強いからというだけじゃない。交通集中による渋滞もあります。車の量が極端に増えていなくても、1カ所に集まれば渋滞するでしょう。半導体でいうと、スマートフォンとかパソコンとか、コロナ前より需要が増えた分、世界で少し足りなくなった。そこに半導体メーカーの火災なども起きて、メーカーは「これから部品や素材が足りなくなるかもしれない」と思って余計に予約する。そんなところがあるんですよ。

連鎖して製品の供給が落ちている。

関氏:家電は落ちていません。だから我々の供給するモーターもどんどん出て、従来より多いくらいです。しかし、自動車は使う部品が多いということもあって生産に影響しています。だから世界中で在庫がなくなっているんですね。例えば、北米はディーラー在庫が平均75日といわれています。でもね、私が自動車業界にいた経験からすると実際は90日くらいですよ。ディーラーに行くと3カ月分、在庫があるわけです。ところが今は30日分くらいしかない。(自動車メーカーが)つくれていないのです。

 これは需要の話になりますが、在庫が減るとディーラーは値引きをしなくなる。しかも在庫が少ないから、お客さんの好みに合う車も見つかりにくくなる。それでも在庫が減っているんです。毎月1週間分ぐらいね。

需要が強い背景は何でしょう。先程の冷蔵庫などのように「巣ごもり」が喚起しているものはありそうですが、ほかにもありそうです。

関氏:貯蓄が増えていることじゃないでしょうか。欧米は完全なロックダウン(都市封鎖)で外に出られないから使えない。米国は多額の失業給付もあった。それがたまっているのが元にあるのではないですか。

日本電産の受注も伸びているわけですね。

関氏:今は言えないけど、面白い展開になってきていますよ。

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