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新型コロナウイルスの感染拡大は、様々な面で経済に打撃を与えている。上場企業で最も多い3月期企業の決算発表延期が増え、今後は株主総会の延期増をもたらす懸念も広がる。大手監査法人の1つ、EY新日本監査法人の片倉正美理事長に決算延期の状況とその背景、総会実施の見通しを聞いた。

片倉正美[かたくら・まさみ]氏
1991年、太田昭和監査法人(現・EY新日本監査法人)入所。2005年、パートナー昇格。11年にシニアパートナー、16年常務理事就任。19年7月から現職。現場では大手電機メーカー、電子部品メーカーの監査に携わった経験を持つ。

新型コロナウイルスの感染拡大で、3月期決算企業のうち2割近くが決算発表を遅らせています。会計面から見ても企業経営への影響は大きくなっています。

片倉正美・EY新日本監査法人理事長(以下、片倉氏):ご指摘のように、東京証券取引所のまとめでは4月末時点で3月期決算企業(2338社)のうち、392社(約16.8%)が決算発表日を延期、または未定という報道がありました。これまでにはなかった規模です。

 大きな要因の1つは、海外子会社の決算遅れが影響していることです。世界中に感染が広がっている新型コロナの問題で、都市封鎖(ロックダウン)が実施されている国が3、4月に急速に増えました。日本企業の海外の重要な子会社については、こちらから現地の監査法人に指示して監査をしてもらうわけですが、一部の国ではこれが動かない。

 米国や英国などは、監査法人もリモートワークが進んでいるので対応ができている企業もあるようですが、新興国ではそうはいかない。インドなどでもそうした事態になっている企業が多いのです。

 特にここ10年、日本企業による海外企業のM&A(合併・買収)が活発化しました。自前で一から作った場合と違い、M&Aで獲得した企業となると、時期と地域にもよりますがIT(情報技術)も、本社と同じレベルではないことがあるし、本社への求心力もこれからというところもある。そういうことも影響しているでしょう。

感染は7~9月期に収束と見る企業が多い

新型コロナの感染拡大の収束が見通せず、業績悪化がどこまで進むかを見通せないことによる減損などを実施するか、どの程度かといった判断の難しさも影響しているのでしょうか。

片倉氏:その点で今、判断が難しくなっているのは確かです。カギは、将来収益を確保できるかどうかの見積もりにあります。

 減損とは、企業の保有する店舗や工場、設備などの収益性が低下して投資額の回収が見込めなくなった場合に、簿価を減額することです。M&Aで企業を買収した際に発生する「のれん」(純資産と買収価格の差に相当)も同様です。それ以外に会計と税の取り扱いの差によって生じる税の前払い相当分である繰り延べ税金資産の取り崩しの判断などもあります。

 環境の変化などによって、将来業績が悪化するとしか予測できなければ、投資額の回収ができず減損になります。繰り延べ税金資産も取り崩すことになり、共に損失が生じるのです。

 問題は、将来の事業環境や業績をどう見積もるかです。新型コロナの感染でいえば、その収束時期をかなり先に見て、その後の需要回復を緩やかに想定すれば、需要低迷の影響が長引くことになりますから減損や繰り延べ税金資産の取り崩しを実施せざるを得なくなるかもしれません。しかし、収束時期を足元の4~6月期とか、7~9月期とか早く想定し、その後需要も急回復するといったシナリオを描けば、減損などの可能性は低くなるでしょう。