東京証券取引所の市場再編を受けて、新市場の上場基準に達していない企業にはもう後がない。抜本的な経営革新で成長力を示さないと市場からの退出を迫られる。だが低成長企業に対する東証の姿勢にもまだ「緩さ」が残る。

前回記事は >「成長か退出か、東証再編が迫る経営改革 崖っぷちの低成長企業

上場株式の値動きを示す株価ボード。資本市場には投資家の資金を企業に流すことで企業の成長を促すことが期待されている(写真:AFP/アフロ)
上場株式の値動きを示す株価ボード。資本市場には投資家の資金を企業に流すことで企業の成長を促すことが期待されている(写真:AFP/アフロ)

 低成長企業に共通する課題は、昔も今も環境変化にいかに素早く対応して、自己変革を起こせるかだ。「市場はそんなところから生まれる将来性を評価する」(大和証券シニアクオンツアナリストの橋本純一氏)。

 即応力がなければ、結局は衰退への道を歩む。金沢市に本拠を置く老舗企業、倉庫精練の業績が10年余りも縮小していった要因の一つは「柱だったアパレル市場が中期的に停滞していった」(羽田学社長)ことにあった。

 そんな中で元オーナー家の経営者が13年初め、起死回生の策としてメキシコに進出。翌年から自動車用内装材向け生地の生産を始めたが、うまくいかなかった。

 自動車メーカーと取引するサプライヤーから誘われたわけでもなく進出し、販売が伸びなかった。その赤字のあおりで国内工場の染色機などへの投資が遅れ、一段とじり貧になった。だが、誰もオーナーに直言できなかった。

 市場環境の変化に経営が対応できず、いったん始めた事業がうまくいかなくてもずるずると続けて傷口を広げることは、00年以降に上場した企業でも珍しくはない。東京証券取引所の市場再編で倉庫精練は東証2部からスタンダードに移行したが、流通株式時価総額は3億700万円しかなく、基準の10億円には届いていない。

 今後は、拡大する産業用資材市場向けの事業に注力する。さらに「親会社の丸井織物が消費者の希望するデザインに応じて生産するEC向けTシャツの製造を請け負う」(羽田社長)など、伸びる分野に資本を投じて再成長を目指すという。

 ここまでで気づく読者も多いことだろう。市場の縮小や競争環境の急変などに応じて動けるかどうかは、結局は経営力の問題だということに。

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