国内需要の消失で与野党とも消費税引き下げや国民への現金給付などを言い始めています。大規模な財政出動でその落ち込みを押し上げることはできるのでしょうか。

木内:消費税引き下げや現金給付で需要をつくり出せるのかどうかは疑問です。消費税を大幅に下げたり、凍結したりしたときに社会保障の財源をどうするのか。現金給付は、結局、貯蓄に回る可能性が高い。本当に困っている人に集中的に給付するようなメリハリをつける必要がありますが、すると所得の捕捉が難しく、実行に時間がかかるということになってしまいます。

 必要なのは、苦境に陥っている企業など供給サイドが壊れないようにすることです。既に政府は3月10日に中小企業を中心とした緊急支援策第2弾を打ち出しています。新型コロナの影響で売上高が5%以上減少した中小企業やフリーランスなどに最大3年間、金利が0%台で融資を受けられるようにしたり、特別利子補給制度を設けたりしました。中小企業向けでは売上高が20%減となったような場合の融資は事実上、無利子としています。

 これでもかなりのものだと思いますが、ホテルなど観光業やイベント事業者など、コロナの影響を大きく受けている企業には大企業を含めもっと踏み込んだ財政支援をしてもいいのではないでしょうか。

ドル調達次第で日本経済にさらなる影響も

中小企業など需要がいつ戻るかわからない中で負債を増やすことを恐れる声も強い。返済期間の長期化や、雇用調整助成金のさらなる要件緩和なども考えられます。

木内:財政出動で効果の低い需要創出策をとるよりはいいですが、あまりに拡大すると民間金融機関の業務を圧迫する恐れも出てきます。雇用調整助成金は厚生労働省が適用要件緩和などを示しました。状況を見ながらさらに修正を考えることになるでしょう。

米FRB(連邦準備理事会)が3月半ば、リーマン・ショック後に実施し、金融危機を収束させたゼロ金利政策を復活させました。さらに、その後も資産買い入れ額を無制限にし、量的緩和も拡充するなど金融政策を連打しています。金融システムと信用構造の維持・強化が経済復活に欠かせないというリーマン・ショックの経験を踏まえたのでしょうか。

木内:リーマン・ショック時には、先に金融危機が起こり、その後、経済が悪化した。今回は経済の悪化から金融危機につながろうとしています。それを止めなければ、経済は崩落していきます。だから次々と金融政策を打って、金融危機を防ごうとしているのではないでしょうか。

 最近では、企業が短期資金調達のために発行するCP(コマーシャル・ペーパー)を買い入れるスキームを設け、消費者ローンや中小企業向け融資を担保とするABS(資産担保証券)の買い入れ措置も決めました。これは大企業や中小企業の資金調達・資金繰り支援のためだろうと思います。

日本を含め世界で、銀行をはじめとしてドルを調達しようとする動きが強まっています。ドル調達が十分にできなければ、日本経済にどのような影響があるでしょうか。

木内:日本でも銀行などが保有する日本国債を売ってドルを調達するといった動きがにわかに活発化しています。3月中旬以降に長期金利が急上昇したのはそのためでしょう。以前なら、経済危機の際には円が買われたし、日本国債が売られることはなかった。ところが今回は、円安になり日本国債が売られている。

金利上昇は債券バブルの修正でもある

 一つにはリーマン・ショック以後のゼロ金利政策復活などで収益環境が悪化する中、邦銀はドル建て貸し出しや(金利の高い)ドル建て証券を大量に持つようになったことがあります。その決済に必要なドルを外から調達していますが、今回は金融危機に陥る前にできるだけとっておこうと動いているのではないでしょうか。

 中堅以下の邦銀はスワップ市場で短期のドルを調達していますが、そこにドルを出すのはヘッジファンドなどが多く、次第に手に入れるのが難しくなりつつある。ドル調達に支障が起きれば、輸入をはじめ、ドル建てで決済される分野にも大きな影響が出てきます。実体経済への悪影響も甚大でしょう。

市場金利の上昇はまだ続くのでしょうか。

木内:もともと超金融緩和政策の下で債券価格の上昇、つまり債券バブルが起きていたともいえます。とすれば、今の動きはその修正でもある。無理な緩和政策のつけが来ていることになります。ドル調達と債券バブルの修正、この両面の影響が今起きているのだろうと思います。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。

この記事はシリーズ「田村賢司の経済万華鏡」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。