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新型コロナウイルスの感染拡大で日本経済に不安が広がっている。リーマン・ショック級とも言われる景気悪化の見通しと必要な対策について、元日銀審議委員で野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏に聞いた。木内氏は、2020年7~9月期まで4四半期連続のマイナス成長になると予測。一方で、世界的なドル不足が日本経済にさらなる影響を及ぼす可能性も指摘する。

残念ですが、東京五輪・パラリンピックの延期が決定しました。新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化は、これでさらに深刻化するのでしょうか。

木内登英・野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト(以下、木内):2021年に延期されるという前提で話すと、そう考える人が多いようですが、20年の景気に関していえば、延期のために、上積みされる分がなくなるだけです。期待されていた関連需要が来年に先送りされ、今年の分としてはなくなるということです。

木内登英(きうち・たかひで)氏
1987年、野村総合研究所入社。90年に野村総合研究所ドイツ、96年には野村総合研究所アメリカで欧米の経済分析を担当。2004年、野村証券に転籍。07年に経済調査部長兼チーフエコノミストとして日本経済担当。12年から5年間、日銀審議委員を務め、17年7月から野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト(写真:清水真帆呂、以下同)

 日銀はオリンピック関連の特需を8兆円程度と推計していましたが、かなりの部分は既に支出されています。延期された場合、失われる需要はチケット販売、施設の運営費など。東京都はこれを1兆9790億円と試算しています。これが先送りされ、名目GDP(国内総生産)を0.36%押し上げるはずのものがなくなるということです。

現金給付の効果には疑問

新型コロナの感染拡大による景気悪化は、2008年秋のリーマン・ショック級か、それ以上との見方が強まりつつあります。

木内:やはりそう見ざるを得ない状況です。主な材料は(1)インバウンドの減少による需要減(2)中国経済の悪化による影響(3)欧米など海外経済悪化の影響(4)国内の個人消費低迷などです。

 私は、20年は名目GDPがインバウンド減少でマイナス0.81%、中国経済悪化が同0.24%、欧米などの経済悪化が同0.5%、そして個人消費低迷が同1.67%という影響になると試算しています。名目GDPは19年10~12月期に前期比年率でマイナス7.1%になりました。これは、昨年10月の消費税引き上げ後の反動減が大きな要因で、新型コロナの影響はその後からです。

その大きな影響はいつまで続くとみていますか。谷は深く長くなるのでしょうか。

木内:お話しした影響は、皆さんが実感されているように一度に出たわけではありません。最初はインバウンド需要の減少から始まり、中国経済の悪化、国内での自粛などによる消費低迷と比重を変えながら続いている状況です。20年1~3月期は前の四半期に続いてマイナス成長になると思います。

 4~6月期については、中国経済がやや回復するとみていますが、欧米の景気悪化で機械や自動車など、日本からの同地域向け輸出は落ちるでしょう。それで、この四半期もマイナス成長。7~9月期は、欧米経済次第ですが、仮にある程度回復しても日本からの輸出が戻るにはもう少し時間が必要になると考えています。ということで景気は7~9月期まで4四半期連続の悪化となるとみています。