ロシアによるウクライナへの侵攻は苛烈さを増しつつある。プーチン大統領は、妥協の姿勢を全く見せず、解決の糸口は事実上ない。「プーチンの戦争」とは一体何か。中央アジアを中心に長年繰り返してきた紛争、戦争では何をしてきたのか。実際の戦闘に、サイバー攻撃や政治的工作、テロ、犯罪行為に、外交攻勢などを組み合わせて展開する「ハイブリッド戦争」を駆使してきた狡猾(こうかつ)なやり口の実態を、国際政治と旧ソ連地域研究などが専門の廣瀬陽子・慶応義塾大学教授に聞いた。

廣瀬陽子(ひろせ・ようこ)氏 慶応義塾大学教授
廣瀬陽子(ひろせ・ようこ)氏 慶応義塾大学教授
2002年慶応義塾大学総合政策学部講師、静岡県立大学国際関係学部准教授、慶応大学総合政策学部准教授などを経て16年から現職。18~20年には国家安全保障局顧問を務める。著書に「コーカサス 国際関係の十字路」(集英社新書)、「ハイブリッド戦争 ロシアの新しい国家戦略」(講談社現代新書)などがある。

ロシア軍はウクライナの首都キエフに迫りつつあるようですが、ウクライナ軍も善戦しています。今の状況をどうみていますか。

廣瀬陽子・慶応義塾大学教授(以下、廣瀬氏):プーチン大統領にとっては、想定外の状況しか起きていないのではないでしょうか。困惑していると思います。そもそも今回の攻撃は、旧ソ連崩壊後のロシアの伝統的な外交行動原理に照らしても、ハイブリッド戦争のあり方からしても、どちらから見ても説明できない。非合理極まりないものです。

 プーチン大統領は(米中央情報局=CIA=のバーンズ長官が米下院公聴会で証言したように)侵攻開始から2日間でキエフを制圧する想定だったようです。そして幻想も抱いていますね。ウクライナはロシアあってこその存在で、今は間違って欧米側に引っ張られ、おかしくなっている。だからロシアによって解放され、ハッピーになるというような。

インフラを麻痺(まひ)させて政府不信を起こす

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り3055文字 / 全文3688文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「田村賢司の経済万華鏡」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。