ロシアによるウクライナへの侵攻は苛烈さを増しつつある。プーチン大統領は、妥協の姿勢を全く見せず、解決の糸口は事実上ない。「プーチンの戦争」とは一体何か。中央アジアを中心に長年繰り返してきた紛争、戦争では何をしてきたのか。実際の戦闘に、サイバー攻撃や政治的工作、テロ、犯罪行為に、外交攻勢などを組み合わせて展開する「ハイブリッド戦争」を駆使してきた狡猾(こうかつ)なやり口の実態を、国際政治と旧ソ連地域研究などが専門の廣瀬陽子・慶応義塾大学教授に聞いた。

ロシア軍はウクライナの首都キエフに迫りつつあるようですが、ウクライナ軍も善戦しています。今の状況をどうみていますか。
廣瀬陽子・慶応義塾大学教授(以下、廣瀬氏):プーチン大統領にとっては、想定外の状況しか起きていないのではないでしょうか。困惑していると思います。そもそも今回の攻撃は、旧ソ連崩壊後のロシアの伝統的な外交行動原理に照らしても、ハイブリッド戦争のあり方からしても、どちらから見ても説明できない。非合理極まりないものです。
プーチン大統領は(米中央情報局=CIA=のバーンズ長官が米下院公聴会で証言したように)侵攻開始から2日間でキエフを制圧する想定だったようです。そして幻想も抱いていますね。ウクライナはロシアあってこその存在で、今は間違って欧米側に引っ張られ、おかしくなっている。だからロシアによって解放され、ハッピーになるというような。
インフラを麻痺(まひ)させて政府不信を起こす
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