日本電産が、創業者・永守重信会長CEO(最高経営責任者)の後継候補となる副社長5人を決めた。外部人材で3度“失敗”した後継者選びは、内部に目を転じて新たな節目を迎えた。重視したのは、独自の経営精神である永守イズムの体得だった。新たな永守流後継者選びとは。

「5人の候補のうち誰が選ばれてもOKだ」という永守重信会長CEO(写真=太田 未来子)
「5人の候補のうち誰が選ばれてもOKだ」という永守重信会長CEO(写真=太田 未来子)

 「大塚、西本、北尾の3人は、業績で大きな貢献をしてきた。小関は(元東京大学の教授で)世界的な研究者だし、研究のネットワークも広い。岸田は(一番社歴は浅いが)ソニー出身で、豊富な仕事の経験があるし、苦労やハードワークもいとわない。5人のうち誰が次期社長に選ばれてもOKだ」

 日本電産の永守重信会長CEOは13日、自身の後継候補となる副社長に、4月1日付けで5人が就任する人事を発表した。このうち、1人が1年後の2024年4月に社長へ昇格する。永守会長自身も、会長とCEO職を退任し、代表権も返上する考えを示した。

 永守会長は「グループ全般のサポートをして、その後はだんだんに社業から離れていく」と述べ、カリスマ経営者として知られた創業者が強くけん引する体制に徐々に幕を引く考えを示した。創業メンバーの1人でもある小部博志社長COO(最高執行責任者)は24年4月、会長CEOとなり、4年後に社長が会長に就任する形でトップを交代していくという。

[画像のクリックで拡大表示]

10年にわたるつまづき

 永守会長は後継者選びで、この10年、3度にわたってつまづいてきた。13年4月にカルソニックカンセイ(現マレリホールディングス)元社長の呉文精氏をスカウトし、6月に副社長としたものの15年9月に退社。呉氏と同時期に入社した吉本浩之氏は米ゼネラル・エレクトリック(GE)グループ企業などで磨いた業務改善スキルを発揮し、18年6月に社長に引き上げられたが、副社長に降格となった後、21年5月に退社した。そして、日産自動車ナンバー3の副COOだった関潤氏を20年1月に招へい。吉本氏と交代で同年4月に社長COOとし、21年6月にはCEOに昇格させたが、22年4月にCEOを外れ、同年9月に退社している。

 永守会長は、後継者を選び出すためにこの10年、社外の人材約200人に会い、探し続けてきたものの最終的に「それは錯覚だった」と言う。そこで改めて社内の幹部層から候補を選び、1年かけて最終選抜していく方式にした。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1915文字 / 全文2887文字

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「田村賢司の経済万華鏡」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。