世界に衝撃を与えたロシアによるウクライナ侵攻。ロシアのウラジミール・プーチン大統領は核の使用もちらつかせる脅しをかけ、さらに圧力を強めるが、ウクライナ軍の抵抗も予想以上に強い。西側は、厳しい金融制裁に踏み切り対抗するが、効果を上げるには時間もかかる。国際安全保障などが専門の鶴岡路人・慶応義塾大学准教授は、今手を出しても米国は強い対応をしてこないと見て踏み込んだのではないかという。プーチン大統領の暴挙の背景、今後の情勢変化のポイントなどを聞いた。

鶴岡路人(つるおか・みちと)
鶴岡路人(つるおか・みちと)
1998年、慶応義塾大学法学部卒、同大学大学院法学研究科修士課程、米ジョージタウン大学大学院留学(慶応義塾派遣交換留学)を経て、英ロンドン大学キングス・カレッジで博士号(Ph.D.)取得。外務省在ベルギー日本大使館専門調査員(NATO担当)、防衛省防衛研究所主任研究官、英王立防衛安全保障研究所(RUSI)訪問研究員などを歴任。専門は現代欧州政治、国際安全保障など。

ロシアはウクライナに侵攻後、攻勢がやや鈍ったとも伝えられます。状況は刻々と変わりますが、どう見ていますか。

鶴岡路人・慶応義塾大学准教授(以下・鶴岡氏):ウクライナ軍が事前に予想されたよりも、あるいは少なくともロシアが考えていたより激しく抵抗しているようです。ロシア軍は、初日にウクライナ軍の防空システムや軍の指揮命令系統を重点的に攻撃したようですが、完全にはたたけなかったようです。

 そこでカギになるのが(西側からの)武器供与で、今後さらに重要になると思います。ウクライナ軍がロシア相手にどれだけの期間持ちこたえられるかが焦点です。それを直接的に支えるのが各国からの武器供与です。ここ数カ月、相当急いで対戦車砲や対空砲を供与してきたのですが、どうやら早速足りなくなってきているようです。

 ウクライナは、NATO(北大西洋条約機構)加盟国のうち、ポーランドやルーマニア、スロバキア、ハンガリーという4カ国と接しているので、その国境地帯がロシアに占領されない限り、(西側から)武器の供与を続けることはある程度可能です。2月25日に開かれたNATO首脳会合でも、第一の議題は武器供与でした。今までドイツが武器供与を認めていませんでしたが、直接供与することについても賛成に転じました。ただ、ウクライナ軍の前線にそうした支援が到着するにはある程度時間がかかるかもしれません。

今手を出しても強い対応はしてこない

プーチン大統領は2月27日、核戦力を含む「抑止力」について特別態勢を取るように軍に命じました。ロシアがどう出るかによっても情勢は大きく変わります。

鶴岡氏:その通りです。ロシアはまだウクライナ周辺に配備した兵力の半分程度しか使っていないようです(2月27日現在)。攻勢を強めるためには、より多くの兵力を投入するか、民間人の居住地域を含めて空爆や無差別砲火を強化するかになる。ウクライナの政権転覆を狙っているのであれば、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領を拘束、殺害というような事態も排除できません。そうなるとウクライナ軍は組織的な抵抗が難しくなります。

道路を走行するロシアの軍用車両。プーチン大統領は核戦力を含む「抑止力」について特別態勢を取るように軍に命じた(写真:ロイター=共同)
道路を走行するロシアの軍用車両。プーチン大統領は核戦力を含む「抑止力」について特別態勢を取るように軍に命じた(写真:ロイター=共同)

NATO、欧州はロシアの侵攻をどの程度予想していたのでしょうか。

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