日本電産を世界一のモーターメーカーに育てた永守重信会長が、電気自動車(EV)向けの動力装置で勝負に出ている。巨額の先行投資で2025年度をメドに足元の販売台数の約10倍に及ぶ生産能力を整備し、世界シェア4割を取るとぶち上げる。動力装置に使う半導体の内製化にも挑む。カリスマの決断力に加え、普段の強気一辺倒の言動から想像できないような緻密な計画性が、その裏にある。
日本電産の永守重信会長が、電気自動車(EV)用モーター市場の制覇と、売上高10兆円という自らが描く大構想に向けてまた闘志をむき出しにしている。
1月26日に開いた2021年4~12月期決算のオンライン説明会。第3四半期までの売上高、営業利益、税引き前利益とも過去最高を記録したが、永守会長は「今回の業績に満足はしていない」と言い切った。

全体の業績は大きく伸びたが、冷凍・冷蔵用コンプレッサー、発電機、ファクトリーオートメーション(FA)など家電・商業・産業用モーター部門で、鋼材の値上がり分の製品価格への転嫁が遅れたことなどから営業利益が直前の四半期から大きく減少した。普通の経営者なら、一過性の出来事と見過ごしそうだが、「本来なら材料費が上がったなどとは言わない。他で取り戻せばいいものだ」と厳しい表情で断言した。
利益の6割を捨てた決断
永守会長といえば、21年6月、CEO(最高経営責任者)職を、20年に日産自動車から招いた関潤社長に引き継いだばかり。「関社長のサポートに回る」との姿勢は崩さないが、やる気満々の永守節は変わらない。この日の会見だけでなく、最近の永守会長への取材を通して筆者が感じるのは、「今こそ勝負時」という強い思いだ。
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