みずほ銀行の藤原弘治頭取が日経ビジネスのインタビューに応じた。新型コロナウイルス禍で苦境となっている航空、運輸業などの企業について「全力で支える」と明言。一方、「与信管理は重要であり、ときには厳しい話もする」と融資先と深度ある議論をしていく姿勢を示した。新型コロナでデジタル化が急速に進むことを踏まえ、みずほ銀が保有するデータを販売する法人向け新サービスを始め、デジタルサービスを強化する方針を明らかにした。

<span class="fontBold">藤原弘治(ふじわら・こうじ)氏</span><br> 1985年早稲田大学商学部卒業、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。みずほフィナンシャルグループ常務執行役員、みずほ銀常務取締役などを経て、2017年同銀頭取。59歳。広島県出身。(撮影:北山宏一、以下同じ)
藤原弘治(ふじわら・こうじ)氏
1985年早稲田大学商学部卒業、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。みずほフィナンシャルグループ常務執行役員、みずほ銀常務取締役などを経て、2017年同銀頭取。59歳。広島県出身。(撮影:北山宏一、以下同じ)

取引先の資金繰り状況はいかがでしょうか。

藤原弘治みずほ銀行頭取(以下、藤原氏):新型コロナウイルスの感染拡大以降、2020年6月をピークに受け付けた融資の要請は17兆円あります。そのうち実行済み、予定しているのは11兆円です。全国銀行協会によると、全国の銀行の9月末の貸出金残高は前年同月比6.1%の伸びでした。増加率は横ばいになっており、一段落したと感じています。

 08年のリーマン・ショックの際は、金融機関が発端となった経済危機でしたので、金融機関が十分に機能を発揮できなかったというじくじたる思いがあります。リーマンを教訓として金融機関の資本増強がこれまで図られており、コロナ禍で各国政府が大規模な財政支援策を出したこともあり、以前と異なった対応ができています。

今後の資金繰りの動向についてどうみていますか。

藤原氏:大企業の取引先は21年度、あるいは21年度前半まで資金繰りのメドはついているように感じています。一方、中堅中小企業は今年末から今年度末にかけて第2弾の支援要請が出る可能性があります。コロナの影響が大きい業種を中心に売り上げが減っており、人件費などの固定費の支出が続いているからです。

 資金提供については全力で対応しますが、そのときに重要なのは事業継続、事業承継といった非金融面のビジネスです。我々は「次世代金融への転換」を目指していますが、それは金融のみならず、非金融の価値も含めた新しい価値を創造することです。そういう面で、今は腕の見せどころです。私はコロナ禍で企業経営者の方とウェブ会議などさまざまな形でコンタクトを取りましたが、そこで分かったのが今回の新型コロナによって潜在的課題が顕在化したということ。自分の会社はどうあるべきか、在宅勤務などで考える時間があったのだと思います。こうした課題意識を次のフェーズで生かせる後押しをしたいです。

資本余力は他行のよりどころ

企業への資本性資金の状況は。

藤原氏:資本性資金供給は足元40件ほどあり、予定を含めて約1兆円を用意しています。我々自身が構造改革を進めている中、政策保有株式について出資先の同意を前提として減らしていきながら、その資本余力を、劣後ローン、優先株などに充てていくことで、我々と取引先が事業を「共創」していくパートナーになりたいです。それを加速する機会が今、目の前に来ています。

企業の外部格付けを維持するためにも資本性資金供給は必要ですね。

藤原氏:ええ。大企業は株式や社債などの直接金融、融資などの間接金融のベストミックスで資金調達を考えています。直接金融において、格付けなどの条件を維持させるためもしっかり支えます。さらにメイン銀行として、銀行団を束ねて支援体制をつくる際、資本余力は他行からみれば、大きなよりどころにもなります。ですから、パートナーとしてリスクを共に取るという点と、格付けなどの条件を支える点と、銀行団として支援する点。この3つの観点で、資本性資金は非常に重要な位置付けです。

資本性資金において、金融機関がどこまでリスクを取れるのか。そのバランスについてはどのように考えていますか。

藤原氏:企業は、固有の事情、置かれた環境、さらに構造改革や人事問題、さまざまな問題を抱えています。それを実行するにあたり、どれほどの資金が必要なのかを考えることがまず大事です。そこを考えずに、金融だけが独立して物事が進むことではないと思っています。金融支援ありきではないです。もちろん、金融仲介機能は我々の重要な役割なので、全力で企業を支えるという思いを持って対応します。与信管理は前提ですが、経営課題、構造改革を進めるにあたり、必要な資金や資本はしっかり出していきます。

特にANA(全日本空輸)などの航空業界を始め、運輸、観光業界の苦境が鮮明です。どう対応しますか。

藤原氏:航空業界など、国民の経済基盤になるような、社会インフラとして重要な産業については、全力で支えていきたいと思います。もちろん、与信管理も重要になりますし、厳しい話もしていくでしょう。しかし、それは支える覚悟があるからです。

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