上場企業が3カ月ごとに業績の進捗を公表する「四半期開示」の見直しが動き始めた。開示に関わる企業の負担を軽減することで、企業が中長期目線の経営に注力できるよう環境を整備するためというが、市場関係者の受け止めは複雑だ。海外の制度も定まっておらず正解はない。単なる賛否にとどまらず、企業と市場の双方の視点を点検し、今の時代に合わせた枠組みを作り出す議論が必要だ。

 四半期開示の見直しは岸田文雄首相が自民党総裁選で掲げ、10月8日の所信表明演説でも盛り込まれた。12日には官房副長官が記者会見で「丁寧に検討を進める」と述べた。実務的には、金融庁の金融審議会の作業部会(ディスクロージャーワーキング・グループ)で今後、論点として追加される可能性が高いとみられる。

 首相が施策に盛り込んだ背景は明らかになっていないが、企業側の声を取り入れたとの見方が大勢だ。関西経済連合会は「四半期開示は短視眼的な経営を助長しかねず、かつ企業に多大な負担をもたらしており、義務づけを廃止すべきだ。既に欧州やシンガポールでも見直しが行われている。企業が中長期的視点に立った研究開発、投資、人材育成に注力し、幅広いステークホルダーに貢献するための環境を整える上で、開示制度の見直しが必要」とする。

 一方、市場からみれば四半期開示は重要だ。これまで入手できた情報がなくなれば、投資を手控えたり、不確かな情報によって相場が変動しやすくなったりしかねない。特に、日本企業になじみの薄い海外投資家からの評価は「間違いなく下がる」(三井住友DSアセットマネジメントの藤原秀洋シニアインベストメントオフィサー)。過去に金融審で四半期開示が論点となった2017~18年には、制度維持が結論になったこともある。株価に無用な悪影響を与えないようにという観点からすると、一見すると今回も見直しは難しいようにも思える。

 ただ、実は市場の専門家の間では「四半期開示の枠組みは維持する必要があるが、開示内容・開示項目は見直しの余地がある」との声が根強い。いったいどういうことなのか。

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