過剰債務を抱えるゾンビ企業は社会問題化するのか。企業への融資を中心に手掛ける投資ファンド、キーストーン・パートナース(KSP)の堤智章社長は「ファンドとしては投資チャンスになる」としつつ、マクロで見れば「数が多すぎて処理しきれないリスクがある」と指摘する。

■本シリーズのラインアップ
コロナ融資で延命 過剰債務「ゾンビ企業」日本を揺らす
「打ち出の小づち」ゼロゼロ融資の後遺症 不良債権化に身構える銀行
上場企業にも債務の重荷 国際基準で浮かんだ126社
「企業の新陳代謝が人を救う。今度こそさらば昭和」冨山和彦氏
さらば「過剰債務のわな」 佐渡汽船の再出発支えた伴走者
「ゾンビの代表格」物流業界で再編 SBSがM&Aで狙う一石二鳥
「融資先の破綻増、金融機関は正念場に」 広島市信組・山本理事長
守るべきは企業より人 ホンダ下請け工場の「名誉ある退出」
・「ゼロゼロ融資不良債権化、投資の機会でもある」キーストーン堤社長(今回)

堤 智章(つつみ・ともあき)
堤 智章(つつみ・ともあき)
三和銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、本店営業部、事業調査部、ニューヨーク支店勤務等を経て、事業金融部、ストラクチャードファイナンス部、コーポレートファイナンス営業部など投資銀行部門を経験。中堅企業の事業承継用バイアウトファンドも立ち上げた。2009年5月株式会社キーストーン・パートナースを設立し代表取締役に就任。

(元本と金利の返済が一定期間猶予される)「ゼロゼロ融資」の返済がいよいよ本格化します。金融面では何が起きるとみますか。

堤智章キーストーン・パートナース社長(以下、堤氏):ゼロゼロ金利は、金利支払いゼロと返済ゼロ=流動性が非常に高いという意味で量的な緩和に相当します。これ以上ないレベルの金融緩和が、財投の一種(信用保証協会の保証付き)として出たという理解をしています。だとすると、結論的には、このゼロゼロ融資の期日が来るからといって離脱すること、すなわち借り換えに移行することは、今のところほぼ不可能でしょう。延長せざるを得ないと思います。

 マクロ経済の視点で見たとき、金融緩和を離脱して、金利の上昇局面に入るかどうかの判断(材料)は、CPI(消費者物価)の状況だけではありません。労働需給ギャップがなくなってくると見なせるかどうか、失業率で言えば2.5%を切るかどうか、によって左右されると考えた方がいいと思います。

 政府はまだ足元のCPI上昇をインフレとして認識していません。潮目が変わっていく流れがあるとすれば、労働ギャップ、賃金引き上げ、失業率の大幅な低下がついてくるときに、金融政策の大きなかじ取りが行われるのでしょう。

 具体的にはどんな状況かというと、産業構造の変化に伴って、需要喚起や市場創造、消費刺激があって、ゼロゼロ融資についても、「あなた十分でしょう。これからは自分で売り上げを上げてください、キャッシュフローで返していくプランに載せ替えてください」と言える状況。そこに至るまでは、制度的には延長ということを検討するのが自然な流れに思えます。選択肢としては、融資期限に関する取り扱いの特例措置みたいな話があり得るでしょう。

 現実問題として、今年度末から返済期限が続々と来たときに、銀行が数十兆円規模のゼロゼロ融資をプロパー融資に乗り換えることができるかというと、結構厳しいでしょう。もう既に与信創造ができない先に対して、財投で(ゼロゼロ融資という)刺激を出したわけですから。

 大げさなイメージをすると、仮に10%程度が不良債権的なものだとした場合、各銀行がリスクアセットとして増やせるかというと、現実は非常に厳しい気がします。つまり、借りている方も、貸している方も「返せないよね」というある種のコンセンサスの下で、期日を迎えるというのが一番現実的な想像です。

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