ゼロゼロ融資の返済が本格化しつつあるなか、実際に中小零細企業と向き合う金融機関では何が起きているのか。20年間で貸出金残高を3倍に増やした広島市信用組合の山本明弘理事長に聞いた。

■本シリーズのラインアップ
コロナ融資で延命 過剰債務「ゾンビ企業」日本を揺らす
「打ち出の小づち」ゼロゼロ融資の後遺症 不良債権化に身構える銀行
上場企業にも債務の重荷 国際基準で浮かんだ126社
「企業の新陳代謝が人を救う。今度こそさらば昭和」冨山和彦氏
さらば「過剰債務のわな」 再成長へ動き出した佐渡汽船
「ゾンビの代表格」物流業界 SBSがM&Aで狙う一石二鳥
・「融資先の破綻増、金融機関は正念場に」 広島市信組・山本理事長(今回)

山本明弘[やまもと・あきひろ]1968年広島市信用組合に入組。支店長などを務め2005年から現職。13年から全国信用協同組合連合会(全信組連)の会長も務める。現在も融資先への訪問を欠かさず続ける。
山本明弘[やまもと・あきひろ]1968年広島市信用組合に入組。支店長などを務め2005年から現職。13年から全国信用協同組合連合会(全信組連)の会長も務める。現在も融資先への訪問を欠かさず続ける。

ゾンビ企業、つまり過剰債務を背負い立ち直る見込みのない融資先は増えていますか?

山本明弘・広島市信用組合理事長(以下、山本氏):間違いなく増えるでしょう。

 「ゼロゼロ融資」のバー(判断基準)がある程度低かったことは否定できません。しかし、とにかく売り上げが激減したあの当時は、必要でした。政府の動きもスピード感があり、評価できます。本当にお客さんの中小零細企業も金融機関も、救われたと思います。

 ただ残念ながら、いよいよ返済が始まるということで、「もう駄目だ、ギブアップだ」という企業が徐々に増えてきています。この傾向は来年3月まで続くでしょう。今の状況で、金利や元金が払えるかどうか、売り上げが戻っていない企業は非常に心配しています。危惧しなければいけない時期に差し掛かりつつあるのかなという気がします。

 一方で、信用保証協会の保証付き融資をお使いになったけれども、基本的に使ってらっしゃらない方もいます。ただ、そういうケースは2割くらいじゃないでしょうか

保証協会保証付き融資が代位弁済になると、プロパー融資が影響を受けますよね。

山本氏:そこがポイントです。保証協会保証付き融資をやっている融資先には、プロパー融資残高が間違いなくあるのです。代弁となると、プロパー資金だけは返済するというわけにはいかない。気をつけておかないと、本当にもろに影響を受けると危惧しています。

 金融機関がこれまでの2年間、引当金をどう積んできたかが重要なのです。当期利益を上げたいために引き当てを少なくした金融機関もあったでしょう。当組合は、2022年3月期の決算から、破綻懸念先の融資残高に対する引当金は、実績率ではなく100%積むことにしました。これまでも徹底的に事前に引当金を積んできましたから、(倒産などが出ても)経営に大きな影響を及ぼすことはなかったのです。

 例えば実績率相当の基準で引き当てしてきた金融機関は、融資先が破綻したら引当金が一気に増えます。これから金融機関は体力勝負の正念場を迎えるのではないでしょうか。

 一番危惧するのは、そうやって厳しくなったときに、取引先を融資で支援できるかどうかです。ここが、今後、日本経済の行方を左右する大きな要因になってくると思います。万が一、この状況で融資(対応)を厳しくすると、企業は本当に困ってしまう。どう向き合うかということが、我々金融機関の大きな課題じゃないかなと思います。

 既に金融機関によっては、「保証協会の保証付き融資があります」と言って、プロパー融資に消極的なケースが出つつあるようです。

 この広島県でも、企業の間で「取引金融機関を見直さなければ」という動きが出ています。当組合では、優良とされる企業との取引件数が、過去になく増えてきています。例えば1億円のプロパー融資を申し込んでも、応じてくれない金融機関があるので、お客さんは非常に不安感をお持ちなのです。うちはリスクを取って、ミドルリスク・ミドルリターンでいきます。1億円の融資申し込みがあれば5000万円を保証協会付き、5000万円をプロパーというふうに柔軟にやります。

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