経営難や成長の限界に直面する中小企業にとって、大手・中堅企業の傘下に入ることは、事業と雇用を維持したまま再出発する方法の1つ。それは、人手不足が深刻な業界ほど効果が大きい。再編が進むことにより、買収を仕掛けた企業だけでなく、業界全体の生産性向上にも寄与する可能性がある。

■本シリーズここまで
コロナ融資で延命 過剰債務「ゾンビ企業」日本を揺らす
「打ち出の小づち」ゼロゼロ融資の後遺症 不良債権化に身構える銀行
上場企業にも債務の重荷 国際基準で浮かんだ126社
「企業の新陳代謝が人を救う。今度こそさらば昭和」冨山和彦氏
さらば「過剰債務のわな」 佐渡汽船の再出発、支えたみちのりHD
・「ゾンビの代表格」物流業界 SBSがM&Aで狙う一石二鳥(今回)

 同業他社による吸収合併が過剰債務問題に悩む企業の解決策につながる事例が増えている。その傾向が顕著に出ているのが物流業界だろう。

 「ゾンビ企業の代表業種」(関西地銀幹部)と金融機関も認識するほど、中小物流事業者が置かれている環境は厳しい。コロナ禍による外出自粛で宅配需要は急増する一方だが、プレーヤーが多く運賃競争は激しい。大手運送会社の荷物を外部委託の形で下請け、孫請けの運送業者が引き受けるが、下層ほど運賃は安くなる。

 ガソリン価格の高騰やドライバーの賃金上昇といったコスト増を運賃に転嫁するのは難しい。最近はトラック輸送の時間外労働に対する規制が強化される「2024年問題」に向けた対応など、労務管理関連の手間やコストもかかるようになった。

 現在、日本に約6万社あるといわれるトラック運送業者の約9割がトラック保有台数100台以下の中小企業だ。10台以下の事業者も5割強を占める。1990年の規制緩和を受けて配送業に参入した事業者が多く、車両などの設備老朽化も進んでいる。オーナーの高齢化や事業承継も深刻な課題となっている。

 そんな構造問題をM&A(合併・買収)で解決しようとするのが、佐川急便出身の鎌田正彦社長が興したSBSホールディングス(HD)だ。

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