低金利で経営者の危機感鈍く
経営者の危機感を鈍らせた大きな要因が低金利だ。通常、金融機関はリスクの高い企業への貸し出しは利率を上げる。だが、長引く低金利政策はこうした金利が持つ本来の機能を鈍らせてしまった。「稼ぐ力」を失い実質的には経営破綻状態にある企業が、低金利の利息だけを返済することで延命されてきた側面がある。
「ゾンビ企業」──。債務超過状態で、借入金の利息の返済すらままならない企業はこう呼ばれる。バブル経済崩壊後の「失われた10年」の分析において使われ始めた言葉だ。銀行が不良債権処理を先送りするために、再建の見込みがない企業に資金を貸し続けたことが日本経済の新陳代謝を低下させていると批判された。
帝国データバンクが、財務データ取得可能な企業群から国際決済銀行(BIS)のゾンビ企業の定義(設立10年以上で、3年以上にわたりインタレスト・カバレッジ・レシオ(ICR)が1未満。ICRは企業が支払利息の何倍の利益を稼げているかを表す指標)に当てはまる企業の割合を算出したところ、20年は11.3%だった。この割合を帝国データバンクが経営実態があると確認した企業数146.6万社にかけ合わせると、ゾンビ企業の数は16.5万社と推計される。コロナ禍前の14.6万社(19年)と比較すると、1割以上の増加だ。
22年1~6月の全国企業倒産件数は3060件と2年ぶりにプラスに転じた。経営破綻や倒産が連続すれば多くの人々が職を失い、日本経済の根幹が揺らぐのは目に見えている。
問題は中小企業だけにとどまらない。6月に民事再生手続きを申請した自動車部品大手マレリホールディングス(旧カルソニックカンセイ)など、中堅・大手企業の倒産も出始めている。
生ける屍(しかばね)のごとく、資金繰りだけで生かされている企業を放置し続ければ、低い生産性、賃金の停滞といった日本経済が抱える問題の解決は難しい。延命に伴う財政負担も重くなる一方だ。
日本経済に埋め込まれた時限爆弾ともいえる過剰債務企業。支えてきた地方銀行を中心とした金融機関はどう身構えているのか。
(続く)
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