日本経済の新たなリスクが、水面下で膨らんでいる。それが、身の丈以上の借金に苦しむ過剰債務企業の存在だ。コロナ禍で広がった実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が始まり、実質倒産状態にある「ゾンビ企業」が増殖しようとしている。中小企業の倒産の連鎖は地方経済の土台を揺るがし、雇用不安にも直結する。とはいえ、バブル崩壊後と同じように延命に終始すれば、産業の新陳代謝は遅れ生産性向上や賃金上昇の足かせになりかねない。苦境を成長への転機に代えられるか。シリーズ「ゾンビ企業リターンズ」では、現状と再生の道を探る。

 「売り上げは以前の4割まで戻ったが、借金を返せる段階ではない。店を畳むことも考えないと」──。東京・新宿で40年以上中華料理店を営む店主(73歳)はこう嘆く。家賃や光熱費などの固定費は月300万円超。時短協力金などの補助金が終了し、春ごろから資金繰りが厳しくなった。

 頼みの綱は、新型コロナウイルス禍を機に政策主導で実施された「コロナ融資」。無担保・無利子で、総額約3000万円。今年5月に返済を始める条件だったが、1年の返済猶予に応じてもらった。ただ、過去の店舗改装時に受けた融資の残債借り換えは、金融機関に断られてしまった。

 今、資金繰りで追い込まれる中小企業が水面下で増えている。

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

 「なぜもっと早く相談に来なかったのか」。東京都中小企業活性化協議会の小林信久統括責任者は、今年6月ごろからある異変を感じ始めていた。同協議会は中小企業の収益力改善や再生支援を手掛ける公的機関で、47都道府県に置かれた「中小企業の駆け込み寺」。ここにきてコロナ融資に関する相談が目立ってきたのだ。

 コロナ融資の中でも、2021年3月までに民間金融機関が実施した実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」は、遅くても来春までには返済を始めなければならない。しかしながら、事業環境が戻らず「返済できない」と多くの事業者が駆け込んでいる。

 税金や年金保険料を滞納する形で資金繰りにめどをつけている企業もあった。小林氏は「事業環境の回復を待つのみで、身を切る改革に取り組めず、傷を深くする経営者が増えている」と話す。

 東京商工リサーチの集計では、21年の企業倒産件数は前年比22%減の6030件。1964年の4212件に次ぐ57年ぶりの低水準だった。コロナ融資や各種補助金、助成金の効果が企業の資金繰りを支えていたことがうかがえる。

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 一方、企業の負債は増加傾向にある。法人企業統計によると、有利子負債から現金・預金を除いた企業の実質有利子負債残高は2022年4~6月期で約359兆円と、コロナ禍前(19年10~12月期)の約305兆円から2割近く増加。リーマン・ショック後の約344兆円を超える水準だ。

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 東京商工リサーチ情報部の原田三寛部長は「コロナ禍での政府の各種資金繰り支援が、課題を抱えていた中小企業の事業再構築を遅らせてしまった」と話す。

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