2020年4月に「初の理系メガバンクトップ」となった三菱UFJフィナンシャル・グループの亀沢宏規社長が日経ビジネスのインタビューに応じた。銀行業界はデジタル化を踏まえ、人員構成の見直しや店舗改革など一層の構造改革は待ったなしだ。新型コロナウイルスの感染拡大真っただ中でのトップ就任となり、「正直、戸惑った」と語る社長に、今後の経営方針、新型コロナの影響、デジタル化への対応などについて話を聞いた。

1986年、東京大院修了、三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。投融資企画部長、経営企画部部長、専務、副社長などを経て、2020年4月から現職。東大数学科出身でメガバンクグループ初の理系トップとなり、デジタル決済事業のGlobal Open Network取締役会長も兼務。宮崎県出身。58歳。(写真:吉成 大輔、以下同)
今年4月に新社長に就任されましたが、まさに新型コロナ禍でした。
三菱UFJフィナンシャル・グループの亀沢宏規社長(以下、亀沢氏):正直、戸惑った状況でのスタートでしたね。今回のコロナ禍で感じたことは2つあります。1つは、金融機関としての社会的責任の大きさ。決済、資金需要、給付金への対応などを通じて、我々はどのような環境においても信頼され続けなければいけないと改めて感じました。もう1つは、この組織の強さ。現場は自律的にコロナ対応を行っています。08年のリーマン・ショックなど過去さまざまな危機があり、それを乗り越えて今に至っていますが、今回コロナ対応を通じて各部署がそれぞれの責任をしっかり果たしているのを見ることができました。
「社会課題解決策=経営戦略」が理想
危機的状況だからこそ、存在意義と組織の力を改めて感じられたのですね。今後どのような経営をしていきますか。
亀沢氏:大切なことは社員にとって日々楽しく、やりがいをもって働くことができる魅力ある会社にすることです。「エンゲージメント(共感性)重視」の経営を目指します。変化の激しい世の中だからこそ、社員間、顧客、社会とのつながりをより意識したいです。コロナの影響については、社会の「分断」と「共生」という2つの議論がありますが、私は共生に向かうと思っています。エンゲージメントの鍵は、何でも言える社の雰囲気をつくることです。若い人が言っていることが常に正しいとは思いませんが、経験がある人が絶対に正しいという世の中でもありません。双方が思ったことをぶつけ合い、正解を探していけばいい。そういう機会をつくることが非常に重要だと思います。
会社として社会的責任を果たすと同時に社会貢献を行う。これはなかなか難しいことですが、社会貢献と経営戦略を一体化させたいです。戦略は我々の都合で作ってしまいがちですが、本来は顧客の課題を解決するためにやるもの。その姿にもっと近づけたいのです。つまり、社会課題に対して我々が解決するために策定するのが事業戦略という形にしたい。もちろん、社会の課題解決は本業だけではできない部分もあります。その際は、寄付やファンドを作るというような別の形で貢献し、本業との組み合わせによって我々の社会的存在意義を高めたいです。
新型コロナへの対応はどのようにしていますか。
亀沢氏:企業からの新型コロナ関連の融資関連相談は1.6万件あり、新型コロナ関連の新規融資実行は約5400件、金額にして約4兆円を実行しています。非対面でのデジタル取引が急増しており、3月の個人向けインターネットバンキング利用者数は前年同月比で約3倍になっています。新型コロナウイルスの問題が、デジタルシフト、社会貢献意識の高まり、働く価値観の多様化をもたらしていくでしょう。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り1353文字 / 全文2708文字
-
【春割】日経電子版セット2カ月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
【春割/2カ月無料】お申し込みで
人気コラム、特集記事…すべて読み放題
ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「小原擁の金融まんだら」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?