「遺伝情報とは何か、社会的にも明確な定義が定着していない段階で『利活用しない』と言い切るのは時期尚早なのでは」。ある大手生命保険会社の幹部は首をかしげながらこう語る。

 この幹部が「もっと慎重になるべきだ」と考えているのが、4月に日本医師会および日本医学会が出した共同声明「遺伝情報・ゲノム情報による不当な差別や社会的不利益の防止」をめぐる生保業界の対応だ。今回の声明では生保会社を遺伝情報・ゲノム情報を取り扱う可能性のある事業者であるとして「遺伝情報・ゲノム情報の取り扱いについて開かれた議論を行い、自主的な方策を早急に検討し公表すること」を求めている。

(写真=PIXTA)
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 ヒトをはじめ、生物を構成する設計図となる情報の集まりともいえる遺伝情報・ゲノム情報は医療の高度化を考える上で必要不可欠なものだ。病気の原因となる遺伝子が分かれば創薬や新たな治療法の開発につながる上、一人一人の病状に合わせた治療もできるようになる。国もこうした情報が持つ将来性を見据え、がんや難病の患者約10万人分の遺伝情報を収集、調査する「全ゲノム解析等実行計画」を進めている。

 有用性がある一方で、「究極の個人情報」であるがゆえに、病気の診断や治療以外の目的で使われると、患者やその家族が差別される恐れもある。

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