(写真:Shutterstock)
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 「いつまで特権意識に寄りかかった殿様商売を続けるつもりなのか」──。

 公正取引委員会の幹部はこう言って、銀行業界に対するいら立ちを隠さない。金融とITを融合したフィンテック市場を、公取委が再び調査することになったのだ。

 菅久修一事務総長は3月30日の記者会見で「ある程度、動いている業界。前回調査の報告書が出た(2020年4月の)時点で、必要があればフォローアップの調査をすることを考えていた」と説明した。

 確かに公取委の再調査は珍しいわけではないが、2年もたたないタイミングとスパンの短さが目立つ。そこには「これ以上は銀行の好き勝手を看過できない」(前出の公取委幹部)という強いメッセージが垣間見える。

コスト削減を巡って芽生えた業界の不平等感

 今回の調査でメインの対象になるのは、QRコード決済の事業者が銀行に支払う手数料や、銀行振込の手数料の運用実態になる見通しだ。

 スマートフォンで提供されるQRコード決済アプリは、ユーザーが自身の銀行口座やクレジットカードをひもづけて入金する仕組みになっている。ここで決済事業者と銀行は、NTTデータのシステム「CAFIS」を通じてつながっており、NTTデータ側に手数料を支払っている。

 また、決済事業者はユーザーがチャージするたびに、1件あたり最高で数十円、またはチャージ金額の1%程度を手数料として銀行に支払っている。さらに口座のひもづけ自体にも、手数料がかかる。

 前回調査の報告書は、銀行がNTTデータに支払う手数料について「10年以上変わっていない」と指摘した。それから半年後、1件あたり最高で3.15円だった手数料は1円に引き下げられた。

 こうして銀行のコストは軽減された。しかし、QRコード決済事業者が銀行に支払っている手数料は「ほぼ変わらないまま」(金融庁幹部)。金額を見直す交渉の場を設けられずに事実上放置され、決済事業者側の不満が高まっていた。

 公取委からすれば「我々が実現させたコスト削減を、自分たちより弱い立場にいるフィンテック事業者と共有しない銀行は傲慢」(別の幹部)というわけだ。

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