ロシアの主要銀行の国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除を機に、新しい国際決済網や通貨システムが生まれるかもしれない。元財務官の行天豊雄・国際通貨研究所名誉顧問は、ロシアを世界の金融システムから外そうとする行為そのものが、第2次世界大戦後に確立したドル基軸通貨体制の影響力を弱めることになりかねないと警鐘を鳴らす。

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行天豊雄(ぎょうてん・とよお)氏
行天豊雄(ぎょうてん・とよお)氏
国際通貨研究所名誉顧問。1931年生まれ。55年東京大学経済学部卒、大蔵省(現財務省)入省。「通貨マフィア」として85年のプラザ合意の取りまとめに重要な役割を果たした。86年から財務官。2016年から現職(写真:的野弘路、以下同じ)

2月24日にロシアがウクライナに侵攻し、紛争が長期化する兆しを見せ始めています。

行天豊雄・国際通貨研究所名誉顧問(以下、行天氏):ウクライナの問題により、第2次世界大戦後、米国の圧倒的な国力がもたらした安定と秩序がいよいよ変わろうとしています。もっとも、ウクライナ紛争以前から、相対的に米国の地位は低下しつつありました。米中対立はその象徴でしょう。米中対立もウクライナ問題も「パックス・アメリカーナ(米国による平和)の終焉(しゅうえん)」という文脈で捉えればすべて関連づけられます。

 今回、西側諸国がロシアに対して科した経済制裁がどうなるか、まったく分かりません。強い制裁は制裁を科す側も痛みを伴います。それだけに、長期化するほど、米国と欧州の結束力が一枚岩でなくなる可能性も高くなると見ています。

 米国には原油も天然ガスもあり、いざとなれば供給量も増やせるでしょう。だが欧州はそうではない。それだけに、紛争が泥沼化してしまうと、こうした立場の違いが制裁に対する姿勢にも影響してきます。エネルギー、食糧の需給はインフレの問題と大きく関わるだけに、皮肉にも米欧間の齟齬(そご)は生まれやすい。

第2次世界大戦後、国際秩序を保つ上で大きな役割を果たしてきた米国の国力が低下したため、世界のあちこちで紛争や小競り合いが起こり始めているということですね。となると、グローバリゼーション、国際協調を前提とした貿易体制や通貨体制にも影響があるのでしょうか。

行天氏:自国市場を開放し、巨額の貿易赤字を受け入れる懐を持ったかつての米国の姿は今となってはありません。世界がこれまで認めていた米国の圧倒的な経済力、軍事力、外交力、そして文化や理念の力が少しずつ弱まることで、国際協調やグローバリゼーションといった概念も薄れ始めています。各国の利害関係は今後、よりむき出しになるのではと見ています。

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