経済がグローバル化した今、金融制裁は武力に代わる強力な武器となり始めている。国際決済網排除や資産凍結で通貨ルーブルは急落、ロシア経済は力を失う。だが同時に、制裁はこれまでのドル中心の金融システムを揺るがす「劇薬」でもある。ロシアによるウクライナ侵攻は、世界および日本の経済活動にどんな影響を及ぼすのか。大規模な経済制裁が米ドル中心の体制を脅かすことはないのか。本シリーズでは、識者の見通しも交えながら、通貨の覇権争いの今後を予想していく。

 「全面的な経済および金融戦争を行い、ロシア経済を崩壊させる」。これは3月1日、ロシアのウクライナ侵攻を受けたフランスのルメール経済・財務相の発言だ。

 ルメール氏はその後、「戦争」という表現はウクライナ情勢に対するフランスの取り組みと整合が取れていないとして発言を撤回する。だが、ロシアの暴挙を武力で阻止するのではなく、経済制裁や金融制裁をもってやり込めようとする西欧諸国の手法は、第2次世界大戦後に拡大・発展したグローバリゼーションの仕組みを逆手に取った「新しい形の戦争」ともいえる。

 中でも今回、強力な威力を発揮したとされるのが、国際的な決済システム「国際銀行間通信協会(SWIFT)」からロシアの主だった銀行を排除したことだ。別名「経済の核オプション」とも呼ばれる。国をまたいだ資金のやり取りに必要不可欠なインフラからロシアを締め出せば、ロシア企業は輸出入品の決済、海外からの投資や借り入れが難しくなる。他国との決済ができなくなるため、収入源が絶たれ、経済は弱体化する。

(写真:ロイター/アフロ)
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 西側諸国はロシアのSWIFT排除と組み合わせる形で「ロシア中央銀行が保有する外貨準備の凍結」にも踏み切った。ロシアのSWIFT排除決定以降、通貨ルーブルは一時40%以上急落した。急落に歯止めをかけるには、ロシア中央銀行が為替介入をする必要がある。だが、介入の原資となる外貨準備が凍結され自由に動かせないとなると、ルーブル安を阻止できない。通貨安でロシア国内のインフレも加速していく。

レーニンも語った方法

 思うように市場介入できないロシアは、ロシアの輸出企業に対して貿易で得た売り上げの80%に相当する額のルーブル買い入れを義務化。ルーブル売りにつながるロシア住民の海外送金も禁止した。企業や個人の外貨獲得の阻止を通じてルーブル安を食い止めようとしているのは制裁が強力に効いている証拠でもある。

 1917年に帝政ロシアを倒したレーニンは「資本主義を破綻させる最良の方法は通貨を堕落させることだ」と語ったといわれている。皮肉にも、欧米諸国のやり方はロシア経済を窮地に追い込んでいる。

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