円相場が不安定化の兆しを見せている。2021年は年初の1ドル=103円台から115円台までほぼ一方通行で円安が進んだ。22年に入り116円台をつけたのもつかの間、1月中下旬には113円台まで円高に動いた。米中銀が利上げ姿勢を徐々に強め、市場が先回りしてドル買いに動いたことが昨年の円安を引っ張ったが、果たして今年はどう動くのか。22年のマーケットを先読みする本シリーズ。初回は長年外為市場を分析してきたJPモルガン・チェース銀行東京支店の佐々木融・市場調査本部長に聞いた。

<span class="fontBold">佐々木融(ささき・とおる)氏</span><br>JPモルガン・チェース銀行市場調査本部長。1992年上智大外国語学部卒、日本銀行入行。日銀では調査統計局、国際局、ニューヨーク事務所などを歴任。事務方として政府の円売り介入も経験した。2003年にJPモルガン・チェース銀行チーフFXストラテジスト。09年に債券為替調査部長。15年から現職。
佐々木融(ささき・とおる)氏
JPモルガン・チェース銀行市場調査本部長。1992年上智大外国語学部卒、日本銀行入行。日銀では調査統計局、国際局、ニューヨーク事務所などを歴任。事務方として政府の円売り介入も経験した。2003年にJPモルガン・チェース銀行チーフFXストラテジスト。09年に債券為替調査部長。15年から現職。

2022年のドル円相場はどうなりそうですか。

JPモルガン・チェース銀行東京支店の佐々木融・市場調査本部長(以下、佐々木氏):JPモルガンのグローバルな見通しとしては第1四半期(1~3月)に1ドル=116円、第2四半期に117円、第3四半期に117円、第4四半期に116円が目安だとみています。

 ただし、これはあくまで目安で、実際にはもっと動くでしょう。個人的には、年末にかけて107~108円もあり得ると思っています。

米国でFRB(米連邦準備理事会)が利上げに動くので、金利上昇にともなってドルが買われるのではないですか。

佐々木氏:利上げは既にマーケットが年4回分を織り込み済みです。さらに追加の利上げを織り込んで117円のドル高・円安はあり得ますが、その後はドル安・円高方向になるでしょう。

2021年11月、東京外国為替市場の円相場が一時1ドル=114円後半となったことを示すボード(写真:共同通信)
2021年11月、東京外国為替市場の円相場が一時1ドル=114円後半となったことを示すボード(写真:共同通信)

 ドル高・円安のピークは1~3月のどこかです。過去の3回の米国の利上げ局面でのドル円の値動きを見ても、「実際に利上げが始まった後」はドル安・円高になりました。今回も、既に投機筋を中心にドル円ロング(ドル買い円売り)のポジションが大きく、実際に利上げが始まった後は巻き戻しの動きが優勢になるでしょう。

 21年のドル安水準103円まで戻るとは思いませんが、ドル円は年間で見れば10%くらいの幅で動くのは当たり前。といったことを考えると107~108円くらいになるのでは。

 そもそも、ドルは2020年後半には世界の主要通貨のなかで最弱の通貨でした。(名目金利からインフレ率を引いた)実質金利はマイナスで、貿易赤字でしたから。21年には「利上げ期待」と世界経済のなかでの「米経済の一人勝ち」によって上昇していたのです。

 21年後半には、PMI(製造業購買担当者景況感指数)でみれば米国の突出ぶりは縮小していますし、貿易赤字は相変わらずです。結局、利上げ期待によるドル高は主にスペキュレーション(投機)によるドル買いに基づくので、上昇したドルの利食いが22年には出やすくなると考えています。

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