自民、公明両党が12月16日に2023年度与党税制改正大綱を決定した。焦点だった防衛費増額の財源を賄う増税策については法人税、所得税、たばこ税を組み合わせて対応する方針を示したが、自民党内の反発に配慮して実施時期などの詳細決定を先送りし、23年に改めて議論することにした。岸田文雄首相の議論の進め方や政権内の政策調整の問題点が改めて浮き彫りになった形だ。大綱には貯蓄から投資への流れを加速させるため、少額投資非課税制度(NISA)の恒久化や非課税期間の無期限化なども盛り込んだ。

 政府は12月16日に閣議決定した国家安全保障戦略など新たな防衛3文書に、23年度から5年間の防衛費を現行計画のおよそ1.5倍の43兆円程度に増やす方針を明記した。5年目の27年度は現状から4兆円弱の上積みが必要となる。

12月16日、記者会見を開いた岸田首相(写真:ロイター)
12月16日、記者会見を開いた岸田首相(写真:ロイター)

 防衛費増額を賄うための財源確保策として、岸田首相は12月8日、歳出削減などで3兆円程度を捻出し、不足する1兆円強を増税で確保する意向を表明。増税する税目や方式、開始時期を自民、公明両党の税制調査会で検討するよう指示した。

 これを踏まえ政府・与党で調整した結果、2.6兆円強は歳出改革や決算剰余金、税外収入などで捻出する方針を決定。残る増税策について自民党内で議論を進めていた。

首相が「防衛増税」にこだわった理由

 首相が11月後半以降に指示を連発し、防衛費増額の規模と財源の年内決着にこだわったのは、防衛3文書の年末までの決定に間に合わせるとともに、23年度予算案と与党税制改正大綱に増額に対応する措置を盛り込む必要があったためだ。

 一方、財務省幹部は首相には別の思惑もあったとこう解説する。

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